計画2

「まて、何をされるのかだけを教えてくれ。今から何を食べさせられるんだ? まさかとは思うけど消化したものを出して、それを食べさせるとか言わないよな」

「そんなことしませんし、できませんよ。そんな汚い方法で自分の痴態をさらさなければいけないなら、死んだほうがましです」

「じゃあ俺は何をされるんだ。それだけ教えてくれ。怖すぎる」

「もう、男のくせにうじうじと。しつこい男の人は女性に嫌われるってイザヤも聞いたことはあるでしょう」

 そういってリアンは僕との距離を近づけてくる。

 僕の顔とリアンの顔の距離が数センチのところにある。視線がぶつかってなんだか気まずくて顔を背けると、「こっち向いてって言ってるでしょう」と首を正面に向けられて固定される。そのまま・・・・・・・・キスをされた。

 そのまま舌を入れられるかと思ったが、僕の口の中に流れてきたものは、血液。

 鉄の味がしたから間違いない。リアンの血だ。

 それを五・六滴口の中に流し込まれて、リアンは口を離した。

 僕は何が起きたのかわからず、頭がパニック状態だった。リアンも頬を赤くしている。

「はぁ、食事を与えるとなんだか他の欲が出てくるんですよね」

 リアンは熱い、と手で顔をパタパタと仰いでいるが、こちらはそれどころではない。

 え、どういうこと? わけわかんない。ボク、ワカラナイ。

「イザヤ、どうですか? お腹膨れてきましたか?」

「え? あ、そういえばなんかさっきより空腹感がないような気が。というか、いい感じの満腹感だな」

「うん。成功ですね。こっちはちゃんと機能していると。じゃあたぶん能力の方も大丈夫でしょう。ゴブリンの能力は目で見てわかるものじゃないので、確認しようがないので憶測でしかありませせんが」

 なんか一人で納得しているけれど、ちゃんと説明してくれないだろうか。こっちは頭がちんぷんかんぷんで、全く整理できてないんですが。

「・・・・イザヤ? びっくりしすぎでしょう。これ、吸血鬼にとっては普通のことですよ。これが吸血鬼にとっての食事ですよ」

「キスでリアンの血を流しこまれるのがか? 自分の体液を他人に流し込むのも十分おかしいだろ」

 自分で言葉にして理解すれば恥ずかしさがこみあげてくる。自分の顔が真っ赤になっていくのがわかる。

 リアンも僕の顔を見て驚き、恥ずかしがり、ほんのり赤い程度だった頬を、真っ赤な林檎なのかと思うくらいに赤くして、視線を逸らす。

「そうでした・・・・イザヤはほかの吸血鬼と違って感情や欲があるんでした・・・・普段だったら相手が恥ずかしがったりしないので当然のようになっていましたが、よくよく考えたら確かにおかしいですよね・・・・けど、こうするしかないと言いますか・・・・これしか食事の管理をする方法がないと言いますか・・・・イザヤもこの方法になれてほしくて・・・・食事の度にこんなに恥ずかしがられると困ると言いますか・・・・・・」

 困るのはこっちのセリフなんだけど。食事の度にリアンにキスされていたら、なんだかこっちの理性が持っていかれそうで怖いんだが。

「これに慣れるのは、そう簡単にはできそうにないと言いますか・・・・僕が能力で困ったときだけ助けてくれればいいから。それ以外は、僕はいつも通りの食事をとりたいな・・・・なんて」

「え、わ、私とするのはそんなに嫌ですか・・・・」

 隣に座っているのに、リアンの声が小さすぎて何を言ったのか聞き取れない。

「え、なんて言ったんだ? うまく聞き取れなかった。もう一度言ってくれないか」

 リアンは「むー」と頬を膨らませて機嫌を損ねた。

「イザヤは魔族食べられるんですかって言ったんです‼ 食べられないでしょう‼ 魔力を供給する手段がないんですから、これからもこうやって食事するしかないんです‼ 男なら腹をくくってください」

 なんだか理不尽に怒られている気がする。なぜ僕はこんなに怒られているのだろうか。

 納得できないがリアンが不機嫌なままでは、話が先に進まないから僕が謝るしかないのか。

「ごめん。ろくに魔力の供給もできないのに。でも、すぐに慣れるのは難しいだろうから、最初のほうはリアンを困らせてしまうけど、我慢してくれないか? 僕も少しずつ慣れるようにしていくから」

「イザヤがそういうなら。私も急に大声出してすみませんでした」

 二人とも黙り込んだ。リアンまで黙ってしまっては話が先に進まないんだが・・・・

「あの・・話の先を聞いてもいいか。吸血鬼の能力も、食事方法もわかった。あとはガイアをどうやって探し出すかだ。リアンの中ではどんな風に考えてるんだ?」

「あ、はい。と言っても確実なものではないのですが、人間は『ギルド』というものを作っていると聞いています。それを活用できないかなと」

 ギルドは民間人から魔族の情報を掲示して、討伐の依頼を出し、その結果に応じて報酬を出す役割をはたしている機関だ。いわば中継役というもの。

 全国に八か所存在していて、そこに『魔族(ハン)狩り(ター)』を生業とする人たちが集まっている。

「ギルドを活用しガイアの情報を探しながら、そこで同業者と協力して戦力を増やしていきます。これで情報も戦力も同時に増やせます。ギルドは八か所存在していると聞きますし、情報は全国で共有しているようですので、一か所で全国の情報も見れるみたいですし、これでどうでしょう?」

 ギルドのこととか、魔族狩りのこととか知っているあたり、一人で調べまわったのだろう。敵対する人間のことを。一人で。

「うん。いい考えだと思う・・・・けど、数か所欠陥があるな」

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