十歳の試しの儀

辺境伯低で休むと、王都見学のため

護衛と共に街へと繰り出した。


街を歩いていると女の子の叫び声が聞こえてきた。


「どうされますか?」


「行こう。見捨てたら目覚めが悪すぎる」


ユリスと護衛は叫び声がしたほうに急ぎ向かうと、店の前で太った少年が、力づくで少女を連れ去ろうとしていた。


「やめろ!」


叫びながら少年に走り寄り、飛び蹴りをお見舞いした。実は前世で武術を習っており、今でも手練は続けていた



「貴様! 何をする!」


少年が蹴り飛ばされた体制から起き上がると、抗議してきた


「それはこちらの台詞だ! 嫌がる女の子をつれさろうなど言語道断だ!」


「何を! 平民の分際で! 俺は男爵家の嫡男だぞ。父上に言って処刑してやる!」


「だから? 父親にすがらなきゃなにもできないわけ? ダサ」


「何を! もう許さん! おい、あいつを処刑しろ」


「仕方ない。ぼうず。恨むなら自分の不出来さを恨みな」


相手の護衛が躊躇なく剣を抜き、切りつけてきたが、それをなんなく交わし、懐に入り込むとみぞおちに一発くらわせてやった。


「ゲホ」


相手はうずくまるが構うことなく、顔面に蹴りをいれてやった。


「で、剣を抜くと言うことは、殺される覚悟はあるんだよな?」


ユリスはゆっくりとプレッシャーを与えるように近づき、剣を奪うと容赦なく腕を切り落とした


「痛てぇ〜! 誰か助けてくれ!」


護衛は無様に転げ回っていた。


「さて、最後に言い残すことはあるか?」


「頼む。俺が悪かった! だから助けてくれ!」


「いいことを教えてやる。俺はな、なんの覚悟もなく、武器を抜くやつが大嫌いなんだよ!」


首を切り落とそうとしたら、妨害が入った


「なんの真似だ?」


その相手は辺境伯の護衛であった


「殺す必要はありません。憲兵に突き出しましょう」


「なぜだ! 武器を抜いていいのは、自分も相手に殺される覚悟のあるやつだけだ!」


「確かに。その通りです。ですが、ここは王都。法律が支配する場所です」


「は、その法律とやらはどこまで機能してるんだかね」


父親が嫁を代金代わりに押し付けられた時、裁判所は相手にしなかったのだ。ま、大商会と言われるまでに成長した今ならわからないが


「姫見つけましたよ。全く勝手にいなくならないで下さいよ」


ユリスが護衛と言い争っていると、鎧を着た騎士が現れた。


「ごめんなさい。それより、腕を切られてるやつと近くで顔を青くしている豚を牢屋にぶちこんで!」


「わかりました。後で説明はしっかりとしてもらいますよ」


「わかってるわよ」


騎士は近くにいた他の騎士に二人を連行させた


「姫、腕を切られた者は出血が多く、いずれ死亡するでしょう」


「そう。ご苦労さま」


女の子は男のことには興味がないようだ


「さぁ、姫説明してもらいますよ」


説明が終わると、騎士がこちらに歩いて着た


「昨日ぶりですね」


そう言われユリスはようやく思い出した。


「あ、昨日の近衛騎士さん」


「思い出していただけましたか。姫を助けて下さりありがとうございました」


「男として当然のことをしたまでです」


「十歳でその考えを持てるとは、将来有望ですね」


「ありがとうございます」


「男の手のことは、不問になるように圧力をかけますのでご安心ください」


事情があるとはいえ、平民が貴族の護衛を怪我させるのは、問題があったのだ


「ありがとうございます。最悪、皆殺しにするしかないと思っていたので助かります」


「皆殺しとは物騒ですね」


「死人に口なしです。証拠さえ残さなければ、商会の伝手でどうとでもなりますから」


ユリスの家は貴族の客もいるため、それ相応の見返りを約束すれば事実の抹殺など問題ないのだ


「なるほど。君は敵に回したくはないな」


国王の覚えもいい上に、実家の伝手で貴族を動かすこともできる。敵対者を闇に葬るなど簡単にできるだろうと、考えていた


「誉め言葉ですね。もう行ってもいいですか?」


「ええ。王都に来られた時にお渡ししますので」


騎士はなんとなくこの少年とはまた会えそうだと思っていた


「わかりました。ではまた」


辺境伯の屋敷に戻り次の日王都を離れた



領地につき、騎士を城に送り届けると家に帰り、セバスは留守中の情報を集めに行った。ユリスは父親に報告をするため商会長室に向かった。ノックをして入ると机の上にある書類の山と格闘する父親がいた。


「ユリス辺境伯様から聞いた。王家の後ろ盾を受けたそうだな! よくやった! これで伯爵に対抗できるぞ!」


「うん。父さん」


父親も内心商会を乗っ取ろうとしてくる伯爵は忌々しい存在だったのだ。


「後、陛下から子どもをもうける様にと王命があったのだが、なぜか知らないか?」


ユリスはあの国王そこまでして俺を家臣にしたいのかと驚いていた


「あ、それは」


父親に国王に家臣にならないかと誘われたことを話した


「そうか。では何が何でも子どもを作らないとな」


「母さんの負担にならないようにしてよ」


「ああ、もちろんだ。あ、ユリスそういえば辺境伯様が褒美を下さるそうだから明日城に行ってくれ」


「わかったよ。父さん」


ユリスは内心ガツポーズをしていた。辺境伯から買いたいものがあり、今回の功績を使って交渉できないものかと、帰りの馬車で思案していたのだ


「話は変わるがユリスが行う十歳の儀は一か月後三か月に渡って行い、披露宴も行うからそのつもりでな」




「わかりました」




十歳の儀とは、仕入れ以外全て自分で行い、指定金額をクリアすれば合格となる。補助は付くが、自分主導で行わなければならない。




「ユリスの商人としての価値を周りから値踏みされることになる。気合を入れろよ」




「うん。これ以上ない結果を出してみせるよ。じゃあ疲れたから部屋で休むね」



部屋に戻ると眠気には勝てずベットに入ると寝てしまった。


そのころ、商会長の元には緊急の連絡が届いていた







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