王族の後ろ盾を得る

落ち着かない中、お菓子を食べながらしばらく待っていると、扉がノックされ鎧を着た騎士が部屋に入ってきた


「陛下が応接室でお待ちです。案内するので付いてきてください」


ユリス達は騎士の後に続いて部屋を出た


「あの、私は平民なので貴族の礼儀作法はわからないのですが」


「よほどのことでなければ、不問にすると陛下から言われておりますので、ご安心ください」


「わかりました。ありがとうございます。騎士さん」


「仕事ですのでお気になさらずに」


ユリスは平民相手でもきちんと対応してくれる騎士に好感を抱いていた


しばらくすると、扉の横に騎士が立っている部屋についた。騎士が入室の許可をもらい入っていったので、後に続き入ると中央にソファーがあり、そこには独特な雰囲気をか持ち出す三十くらいの男の人が座っていた




「来たか。私がエルベス王国の国王、クリス フォン エルベスである。子どもがユリスで後ろの騎士は辺境伯がつけた護衛であっているか?」


「「はい。間違いございません」」


「そうか。まずはユリスも護衛もソファーに座ってくれ」


「「はい」」


「よく材料を期日までに届けてくれた。感謝する。おかげで娘は助かった」


「「有難きお言葉」」


ユリスも貴族を相手にする際のマナー講習のおかげでなんとか、反応することができた」


「ユリス、辺境伯が魔道電話で、おぬしがスキルで出した情報を元にドワーフが馬車を開発したと言っていたが本当か?」


「はい。事実であります」


「そうか。その馬車で王都までどれくらいかかったのだ?」


辺境伯はユリスの父親から話を聞いていたが、半信半疑だったため詳しいことは言っていなかった。国王も連絡を受けた時は半信半疑だったが、期日までに材料が届いたため、馬車について興味を抱いていた。


「辺境伯領から三日で王都に着きました」


「三日だと!!」


王都から辺境まで最低でも一か月はかかるため、国王は心底驚いていた。それと同時に物流を大変革させる馬車の情報を出した少年を囲い込めないか試案していた。


「決めた。ユリスにはこのネックレスを渡す。これは特殊な素材でできていて、王族の庇護下にいることの証だ」


簡単に言ってしまえば、後ろ盾として王族がいることを証明するものだ


「え! そんな恐れ多いです」


ユリスはもらい受ければやっかいごとの種になると思い、全力で辞退したかった


「顔に面倒ごとは嫌だと書いてあるが、このまま何もないと思っているのか?」


「それは…」


ユリスとて話を聞いた貴族がほっておく可能性はないと思っていた。


「わかっているようだな。そうだ。辺境から三日で移動できる馬車など物流を完全に変えてしまう。利益に目ざとい貴族が黙っているはずがないぞ」


「やはりですか」


「ああ、よくて囲いをつける。悪ければ奴隷にして利権そのものを奪いにくるぞ」


国王の言葉は脅しではなく実際にあり得ることだった


「わかりました」


ユリスは貴族のひも付きより、名君として名高い国王に紐をつけられるほうがましだと考えた。そしてこうなれば、王族が後ろ盾になった事実を最大限利用してやろうと思っていた


「では、これをかたみはなさず持っていてくれ」


国王はネックレスを渡すと、とてもご満悦そうだった。


「そうだ! 後王都での商業権と御用商人にしてやる。これで私と簡単に会えるぞ」


スキルで出したと言うことは、まだ隠し玉がある可能性が高く国王として、つながりを太くしておきたかった。


「後、白金貨を二千枚やる。うまく使え」


「え?! 二千枚ですか!」


ユリスは驚いていた。この世界では小銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨とあり、裕福な貴族の収入が、白金貨三百枚から五百枚なのだから、どれだけすごい金額かわかると言うものだ


「不服か?」


「いえ! 滅相もございません」


「ならいい。所でユリス。おまえのスキルの詳細を教えてくれんか?」


つながりは太くしたが、もっと具体的な情報を集め国益に繋げられないか考えていた


「陛下。商売のタネですのでどうかご容赦下さい」


ユリスはなんの対価もなしに教えるつもりはなく、一度断わった


「望みはなんだ?」


国王とて、海千山千の狸どもを相手にしてきたのだからユリスの考えなどお見通しだった。


「ベイル伯爵家や貴族が我が商会を狙ってきた場合助けていただきたいのです」


ユリスに取っての懸案事項、第二夫人の実家の伯爵家だ。この件を成功させたことでユリスの立場は以前より強化される。十歳の義は今回の報酬を使って難易度をあげ、商人としての格の違いを他の商人や商会の人間に示しわからせるつもりなのだ。


そうなると、確実に第二夫人派の後ろ盾である伯爵家は最低出張ってくる。下手をすれば、他の貴族も出てくる。なので教えることで不利益があろうとも、この条件で辺境伯様以外にも王家を強力な手札として持っておきたいのだ


「よかろう。貴族派ごときだまらせてやる!」


ベイル家は貴族派で、その中でも力があり国王からしたら邪魔な存在なのだ。


「ありがとうございます」


ユリスは早速スキルを教えた


「なんと! すごいぞ! ユリス。金ならいくらでもだしてやるから王家に使えないか?」


ユリスのスキルは国を発展させるのにかなり有用なスキルだと気付いた国王はなんとしてもユリスを家臣としてほしかった。


「申し訳ありません。私が家臣になると、跡継ぎがあの馬鹿しか居なくなりますので」


「なるほどな。それはまずい。辺境伯に恨まれる」


辺境伯は国王派の重鎮で、国王がたよりにしている人物でもあった。ここで国王は名案を思い付いた。この名案を命令し、実行させることにした


「では、跡継ぎの問題さえなければ、家臣になってくれるな?」


「はい。陛下。そうなれば必ず」


ユリスはこれ以上断って国王の不興を買いたくなかったため承諾した


「けっこう。けっこう」


国王はご満悦で、謁見は終了し、ユリス達は疲れたため、今夜の宿である辺境伯の屋敷を目指した




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