輸送
城に着くと門番に話が通っていたらしく、すぐに品を渡され、物資を積み込むと、護衛の兵士が馬車に乗り込んできた。
「早く馬車をだしてくれ」
他の兵士とは違う鎧を着た兵士がそう指示してきた
「わかりました。セバス頼む」
窓から身を乗り出しセバスに指示をだすとすぐに馬車は発車した
ユリスは馬車の中に体を戻すと、急いでいる理由を聞いた
「実はな、この薬を必要としているのがこの国の王女様で、命がかなり危ないのに、貴族派が材料の輸送を妨害しているんだ」
「それは襲われるかもしれないと言うことですか?」
「そうだ」
ユリスはとんでもない貧乏くじを引いたなと思っていた。税率や王権の強化などの問題で国王派と貴族派がかなりやりあっていると、父親から商業の授業で聞いていたのだ。
「襲撃の可能性は?」
「可能性は低いと考えているが断言はできん」
辺境伯領に届くまで賊に何回も襲われた影響で、王城から指定された期日には間に合わないことが確定していた。貴族派の材料の搬入を遅らせ薬を作らせないという目的は遂行されている以上、無理に待ち伏せて襲ってくる可能性は低かった
「それにしてもこの馬車本当に早いな!」
「ええ。このスピードで寝る時と操者の交代以外止まらずに王都に向かいます」
「間に合う手段があると辺境伯様から聞いた時は、信じれなかったがこれなら間に合うかもな」
「ええ。間に合わせて見せますよ」
ユリスは母親と父親のために絶対間に合わせてみせると心に誓っていた。万が一間に合わなければ、その責任を王都の貴族に糾弾されかねないのだ
出発してから三日ようやく王都の城壁が見えてきた
「なんとか間に合いましたね」
「ああ、これも君のおかげだ。ありがとう!」
隊長が手を出してきたのでユリスもそえれに答え握手をする
隊長は笑みを浮かべており、とても嬉しそうだった。これで主家が責任を取らされることはなくなったのだから無理もない
「いえいえ。でも王都までの道がしっかりと整備されていて助かりました。もし整備されてなければ、スピードはもう少し抑えめになっていたはずですから」
「辺境伯領から王都までの道は有事の際、援軍の行軍速度を上げるため整備することが法律で決められているんだ」
「なるほど」
辺境伯家の紋章を見せ貴族門から入ると、王城へと向かった。王城に着くと馬車の見張りとしてセバスと護衛数名を残し、薬の材料をもつ僕を護衛で囲うようにして騎士の案内のもと王城へと入っていった
「僕が渡す役でいいのですか? 隊長」
「ああ、今回俺達の任務は君を護衛して、材料を確実に王家側に渡すことだからな」
「なるほど」
隊長と話しながら歩いていると、ある部屋の前で止まり部屋に入った
「君達か!? 薬を持って来てくれたのは!」
「そうです」
「早く薬の材料を渡してくれ! 王女殿下が危ないんだ!」
ユリスは隊長をみると頷いたので、白髪の爺さんに材料を渡した
爺さんは材料をもらうとすぐに調薬を始めた。ユリス達は騎士の案内で調薬室を出ると待合室へと通おされた。
「のちほど、陛下と謁見していただくことになります。近衛騎士が迎えに来ますので、従って下さい。では失礼します」
騎士は部屋を出ていった
「隊長どうしましょ!? 作法なんて僕知りませんよ!」
「落ちつけ。陛下もその辺は辺境伯様の連絡でご存知のはずだからご配慮くださるはずだ」
そう言われたが、ユリスは、待っている間心配で落ち着かない時間を過ごすことになった。
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