工房へ依頼に行く



「ユリス様。セバスでございます。入ってもよろしいですか?」


「どうぞ」


セバスとは父親がユリス親子に付けた専属の執事である。セバスがドアを開け中に入ってきた。


「ユリス様。聞きましたぞ。なぜあのようなことを引き受けたのですか?」


「それは、勝算があるからさ」


ユリスは不敵な笑みを浮かべた


「随分と自信がおありのようですね。その勝算を私にも教えていただけますか?」


「いいよ」


ユリスはスキルのことを教え印刷した設計図を見せてゴレーム馬車について説明した。ゴーレム馬車とは、魔導具の一種で馬より早く走れる上に、エサ代不要。休憩は人間がたまに取る分だけで済む夢のような馬車なのだ。


「なんと!! そのようなすばらしい馬車が作れるのですか!!」


「ああ。そうだ」




ユリスはドワーフ工房に到着した。ドワーフ工房とは、商会が提携している工房である。中に入ると弟子がでてきた


「これはぼっちゃま。今日はどうなさいましたか?」


「親方はいるかな」


「へい。お待ちください」


すぐに工房の奥から背の小さいドワーフの親方が出てきて目の前まで歩いてきた。


「親方まずはこれを見てくれ」


ユリスは、手のひらに収まるくらいのきれいな、玉を取り出した。


「再生」


すると玉の上空に、映像が投影され始めた。これは情報マーケットの機能の一つだ


「な、なんだ! この動く絵は!」



「後で説明するので、今は見てください」


親方は後で説明してくれるならと、映像に集中しだした。


「ユリス! 説明してくれ!。これは世紀の大発明だぞ!」


「これは僕のスキルで購入したものです」


「なんだと! てか、スキルで購入したってことは、まだ他にもあるのか?!」


「はい。もちろんです」


「ユリス! 頼む。これから作るものは全て俺に作らせてくれ! その代わり俺はユリスの専属になる!」


親方はそう言うと土下座をしてきた。親方の目は決意を秘めていた。物作りに関しては高いプライドのある種族であるドワーフが一個人の専属になるのは異例なことだった


「わかったよ。親方。僕もいろいろ頼むなら親方しかいないと思ってたし、構わないよ」


「本当か! 恩に着る」


親方はこれで未知のものをいろいろ作れると思い大満足だった。


「それで作れそうかな?」



「二日くれ。ドワーフの意地にかけて必ず完成させてみせる!」


「頼みます。親方。後これ馬車の振動を吸収装置。これもよろしくね」


「任せろ」


玉の使い方を教えて二人は工房を後にした。


その日の夜


食堂で夕ご飯を食べ終わると、父親が辺境伯の件について話しだした


「辺境伯様の件は、ユリスに一任したので、皆そのつもりで」


「ちょっと待ってあなた! なぜ優秀な嫡男に任せないの」


第二夫人は自分の息子が任されなかったことが不満なようだ


「優秀て」


ユリスはそう言うと、腹を抱えて笑いだした。


「何で笑うのよ!」


「ハァ? 家が潰れそうになる理由を作った元凶の分際で優秀とかありえないでしょう。あ〜おなかが痛い」


「キー! リスク何か案をだしなさい!」


「わかりました。父上。飛龍便を使ったらいがでしょう? そこのバカに任せるより安全だと思いますが」


「さすがリスクちゃん! 名案だわ!」


「はぁ〜馬鹿死なないと治らないらしいですね。可哀想に」


ユリスは明らかに相手を見下していた


「全くね。ユリス。あなたはあんなバカにならないでね」


「大丈夫だよ。母さん」


「馬鹿はあなた達でしょ! こんな名案を馬鹿にするなんて。あ、わかった。リスクちゃんのあまりの優秀な提案に嫉妬しているのでしょ」


「は? 嫉妬? 寝言は寝てから言っててほしいね。飛龍飛龍便はものすごく高いし、薬の材料は寒さに弱いものが多いて、授業で習ったよね? どこが名案なのさ。呆れるね」


「本当ね。商会を営むものなら常識なのに」


「全くだ。飛龍便で済むなら辺境伯様がうちに無茶振りするわけないじゃないか。ちゃんと勉強していたのか?」


「もういいわ。行くわよリスクちゃん」


「待ってよ。ママ」


二人は旗色が悪くなると急いで逃げ出して行った



それから二日後。完成したと連絡がきたため、二人は工房を訪れていた


「どうよ! 俺の腕は」


親方が自慢するだけのことはあり、二日で作ったとはとても思えないほど立派な馬のゴーレムと馬車が、二人の目の前にあった


「さすが親方!」


「おう。昔約束したとおり、初めての依頼だからただでいいぜ」


「ありがとう。親方」


二人は親方に礼を言うとゴーレム馬車に乗り込み、領主の城に向けて出発した





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