第27話 雨下に語らう 予知夢
妙なことになった
なぜこの人とあの人は同じ顔なの?
あなたにあなたに聞いて聞いているのです
聞き取れないのでもう一度――
銃声
「失礼。知り合いと似ていたので」
「そうかい」
膝をついていた女が立ち上がる。つい先ほどまでは私の狙撃対象だった人物。
「あなたが眉まで染めていれば、瓜二つでした」
「そうかい」
本物よりもやや高い声質。出会いが声だけなら、もっと容易に区別できただろう。
「話をしてもいいかい。今ここで」
「どうぞ」
わざわざ断るほどの戦意は私にない。
女は考え事をするように、姿勢を崩して腰に手を当てた。その手はホルスターに収まったハンドガンへ近いが、西部劇風の決闘が始まりそうな雰囲気はない。今のところは。
私には、この相手を倒す機会が二度あった。
一度目は私による狙撃で、相手の不正な超能力によって阻まれてしまった。
二度目は私が蹴りを放った時で、あの直後なら銃で仕留めることが充分可能だった。
相手の顔が知り合いと似ていたので、攻撃しない……。スポーツの試合なら、無気力と判定され負けてしまうだろう有様だ。
視界の隅の通知欄が、知らない誰かの勝利と敗北を伝える。しばらく私が視線を向けていなかったため、通知欄がやや長い。……私の知り合いのカップルは、この街の戦いとはまだ無縁のようだった。
私はスリングで肩に下げていた自分の銃から弾倉を外した。こうした細かい作業ができるのは、このVRゲームの良い所だ。予備の銃は、軽量化しようと装備していなかった。
「こちらの人も、同じようにして構いませんか」
「どうぞ」
バルセロが幽体離脱から戻った際の混乱に備えて、私はバルセロの銃からも弾倉を外した。
銃本体に一発残っているが、固まったバルセロの手で操作部が遮られており、諦めるしかなかった。また、バルセロは私と同様に、銃の予備を持っていないようだった。
女はまだ語りださない。時間がかかりすぎる。話がしたいとはなんだったのか。会話に不慣れなのだろうか。あるいは高性能PCでもって私との会話チャートを作成中なのか……。
まぁ、いい。
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