第22話
次の日、レオパードは朝日が昇ると共に目を覚ました。少し寝足りないなと思いながらも起き上がると、着替えコートを羽織る。そうしトランクから古ぼけた本を取り出すと、部屋を出てリビングのソファでアエネが起きてくるのを本を読みながら待つ。そうしているとアエネが眠そうに目を擦りながら部屋から出てきた。
今日は王城へ向かい儀式を受ける日だ。
「うー緊張してよく眠れなかった……」
「そうかい、で結局その服で行くんか?」
「そうよ、いいでしょ?」
というアエネは何時ものサイドテールで白と紺のボーダーのスカートに白のフリルの付いたブラウス、薄茶色の上着に小さな鞄は白で靴はヒールのあるショートブーツ、といういで立ちだった。その清潔感があってそれなりに大人っぽさも感じつつ良い仕上がりだなとレオパードは思った。
「その服、ええんとちゃうか?」
「でしょ!悩みに悩んだ結果よ!凄いでしょ!」
「おー凄いなー」
「アンタ本気で言ってないでしょ!」
そう言いながら散らかっているソファを通りレオパードの座るソファに対面する様に座った。
アエネはそろりそろりと近づいて、レオパードが読んでいる本を奪い取った。
「なにすんねん!」
「だって気になるんだものー!どれどれ、どんな本なのかし……ら?ん?手書き?日記?誰の?」
「返さんかい!ボケ!」
「ボケとか言わないでよ!ていうか何?この本いったい何なの?」
「……日記や、俺が探しとる人のな」
「読んでて面白い?」
「……思い出に浸るって感じやな……ってなんやねんその目」
「他人の日記なんか読んじゃ駄目でしょ」
「ええやろうが、俺が何しようが」
「まぁ、そうだけど……」
そんな話をしているととホテルスタッフがやって来て朝食の用意をし始めた。ダイニングテーブルに朝食を並べるとレオパードに本をかえしたアエネと、レオパードもダイニングへと移動した。そうしてパンにバターをたっぷり塗りそれを頬張っては茶を飲むレオパード。
「で、今日が儀式の日なんやろ?俺はどこまでついてったらええんや?」
「分かんない、けどお城までは一緒に来て欲しいかな」
「へいへい、りょーかい」
そう言いながら手早く朝食を終えると、アエネは小さな鞄に伯爵から預かった手紙を入れて、
「レオ―、もう準備出来たわよー」
「おう、今行く」
そして二人スイートルームを出て鍵を受付に渡すと、二人は王城までのんびりと歩く。昨日の雨が嘘の様に晴れ渡った朝の空を見上げて、水溜りが残る石畳の道を二人は進んでいく。
そして王城を目指して一時間経ってやっと王城に辿り着いた。街の真ん中にありどこからでも見えるものだからすぐに着くだろうと思っていたのだが、思った以上に距離がありアエネは到着してからゼエゼエと荒い息を吐いている。
「お嬢、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見える?」
「見えんな」
「そういう事よ」
アエネは息が整うまで王城手前の通りの手すりに掴まってしゃがみこんでいる。そして体力が回復すると、手すりを持って立ち上がり大きく深呼吸すると、
「行くわよ、レオ」
「分かった、お嬢」
意を決した様に頷くアエネに、同じ様に頷くレオパード。
そして王城の門の前に立つ番兵に近付いていくアエネとレオパード。
「何用か」
そう言ってくる番兵に伯爵の手紙を渡すアエネ。「失礼する」と言ってから手紙を開け中を見る番兵。それを読んで敬礼をすると、
「失礼いたしました、コラドリス伯爵令嬢。それではこちらへどうぞ」
そう言われ、アエネは番兵の後を付いて行く。その後ろからレオパードも付いて行こうとするが、
「お前はここまでだ」
「その人は私の護衛で……」
「護衛と言えど、ここから先は許可を得たものしか入れない決まりです」
「そうですか、分かりました」
「レオ?」
「お嬢、俺はここで待っとるから頑張ってきーや」
そう手を振るレオパードに手を振り返すアエネ。そうして王城から一つ通りを挟んだ、先程アエネが掴んでいた手すりにもたれて待つ事にしたレオパード。
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