第18話

 翌日、レオパードが目を覚ますと、雨音が聞こえてきた。起き上がりベッドを下りると着替えて、ソファに掛けておいたコートを羽織ると、部屋から出た。

「……おはよう、レオ」

「おう、おはようさんお嬢」

 そう朝の挨拶をする二人。アエネは何時も通りのサイドテールにレンガ色のワンピースに白い薄手のカーディガンを着て、茶色のショートブーツを履いていた。

「で、雨やけど買い物行くんか?」

「行かなーい」

「やろうな、こっちも助かるわー荷物持ちせんでええからな」

「という訳で、暇。何か相手しなさい」

「カードゲームとかか?」

「あんたイカサマするから嫌よ」

「やったら何がええねん」

 と話し合っていると、ホテルスタッフが朝食を運んできた。ダイニングのテーブルに食事を並べていくと、そそくさと去って行った。レオパードとアエネは席に着くと焼き立てのパンに手を伸ばした。

「えーと、昨日は、その……助けてくれて、あ、ありがとね……一応言っておかないといけないと思ったから言うけど」

「素直に笑顔でありがとー言うたらええのにひねくれとるのー」

 パンにたっぷりバターを塗りながらそれを頬張り、茶を飲むレオパード。アエネはケシナジュースを飲んで「やっぱりこれよね」と頷く。そうして食事を終えると、アエネは暇そうに部屋のソファの一つに座った。

「レオ―暇よ、相手しなさい」

「何がええんや?カードゲームか?」

「レオってばイカサマするじゃない、さっきも言ったし却下よ」

「じゃぁ何がええねん」

「ちょっと考えるから黙って」

 何か考える様に顎に手を当てて、そうだ!とひらめいた様に手を打つと、もう一つのリビングへと向かって行った。ごそごそと棚を探すと、お目当ての物を発見した。

 それをソファテーブルに置くと、

「レオ―来てー」

「なんやねん、ええもん見つかったんか?」

「これよ、これ、ロジレック」

 ロジレックとはこの世界におけるボードゲームの定番のでサイコロと複数の駒を使って遊ぶものだ。

「ロジレックかいな、まぁやった事あるしええやろう」

「今度こそ負けないんだからね!それとイカサマ禁止よ!」

「へいへい」

 そうしてお互いソファに座るとロジレック対決が始まった。先手はアエネでサイコロを転がしその分駒を進める。後手のレオパードも同じ様に進めていく。そして一時間後、

「もうー!どうしてアンタばっかり勝つのよ!腹立つわね!」

「知らんがな、お嬢が弱いだけやろ」

「もう一回よ!今度こそ勝つんだから!」

 と言ってまたゲームを続ける。

 そうしてゲームに熱中していると昼になったのか、ホテルスタッフがやって来て昼食の用意をしても良いかと聞きに来た。それに用意を頼むと昼食が運ばれて来る。

「さて、昼飯やからここで終わろかー」

「ちょっと勝ち逃げは許さないんだからね」

「さよかーまた後でなー」

 と言いながら昼食の運ばれてきたダイニングへ向かうと、運ばれてきた昼食の席に着くと、豪華な食事を一緒に取る。

 それが終わると「次こそ勝ってやるんだから」と言うアエネの言葉でロジレック対決の続きが始まった。ゲームの合間にレオパードは茶を淹れ、自分とアエネの分を用意するとゲームをしているソファテーブルへと置く。

「んで、随分待っとるけど、どないするんや?」

「ちょっと、もうちょっとだけ待って。あっちをこうしたらああなって……あー駄目ねぇ……」

 うー……と諦めた様に駒を置くアエネに、容赦なく勝利の一手を差して、またレオパードが勝った。悔しそうに頬を膨らませるアエネに、果物の入った籠を持って行ってやれば、

「こんなので機嫌が直るなんて思わないでよね」

 と言いつつもチータの実を抓んでパクリと頬張る。気分は先程のイライラから一転して甘い果物を食べて嬉しそうにしている。「チョロいな」とレオパードは嫌でも思ってしまう。

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