第17話
レオパードは迷った、今すぐ連れ帰るか、このまま放置して危ないギリギリのところで助けるか。
さすがに助けないのは伯爵との約束を違える事になるので、それはだけは出来ない。
とりあえずレオパードは荷物を持ったまま二人の後を追った。少々間隔を開けて遠くから様子をうかかがう。二人が街の大通りをそれて路地へと入っていくのを見ると、歩を早め同じ路地へと入る。そして寂れた建物に入っていくのを確認すると、カイネス粒子を操り、階段を作り出すとそのまま建物の屋上まで上っていった。そして屋上の施錠を槍を形成して扉ごとぶち壊した。
そっと階下の様子を伺う。
階下からは言い争う様な声が聞こえてきた、女と複数の男の声が。
それを聞いて急ぎ階段を下りていくと、アエネを取り囲んで複数の男が卑下た声で卑猥な言葉を言っている。そして更に階下の三階に降りたレオパードは男の数が五人と分かれば、そして男の一人がアエネの腕を掴もうとしたところで、
「触るなや!」
「レ、レオ!!わ、悪いけどアンタたちには痛い目にあって貰うわ!」
「チビに何ができるって言うんだよ!」
「悪いのぅ、ええ教訓代になった」
そう言うと槍を回転させながら、柄の部分で男の一人の腹を思い切り突く。そのまま地面で靴を回転して柄で思い切りもう一人の男の頭をぶっ叩く。そうして男たちが蹲り距離を取ると槍を消し、アエネに近付きその体を抱き上げると、後ろの窓ガラスを割ってそのまま地上に落下していく。そのまま地面に衝突するかと思いきや、レオパードがカイネス粒子を操り階段状に足場を作るとそれにトントンと降りていく。
トントンと降り地面に辿り着くとアエネの体を離した。邪魔そうに大量の紙袋を肩に掛けるレオパード。
「ちょ、なによアレ……」
「世の中悪い奴は山の様におるんや、今回はええ教訓になったと思ってこれからは知らん奴には付いて行くんやないで」
「わ、わかってるわよ!」
それから気を取り直して、という風に買い物を再開したアエネに付いて行くレオパードだった。
そうして夕方になり空が橙に染まり始めた頃、
「歩き疲れた、レオ運びなさい」
先程の倍以上の量になった買い物袋を手にしているレオパードに向かってアエネはそんな事を言う。
「そんなん無理や、諦めて自分の足で歩きー」
「なによーアハルマンドなんでしょー出来るでしょー空も飛べるんだしー」
「何でもできる訳ちゃうわ、早う行くで」
「ちょっと置いて行かなくてもいいでしょー」
先にホテルの方へと向かって行くレオパードの後を追いかける様に、アエネは駆け出した。そうしてホテルに辿り着くと受付で鍵を受け取り、離れのスイートルームへと向かった。
鍵を開けて扉を開き部屋の中に入ると、両手いっぱいの荷物を入ってすぐのソファテーブルの上に置いた。
「俺はちっととばかし部屋におるわ、なんかあったら呼べよ」
「はいはーい、わぁーやっぱりこのネックレス綺麗ぃ~」
レオパードの事などそっちのけで、買って来た物を部屋中に広げていくアエネ。それをやれやれと思いながらレオパードは自室へと戻った。自室のソファに座るとだらりと倒れ込んだ。
「あーしんど、これ明日もなんか?」
そう独り言を呟きながら、懐から写真を取り出す。
「探したいねんけどな……この調子やと無理やなー……」
ため息を吐きながらレオパードはその写真をソファテーブルの上に置くと、ゴロリとソファの上に寝転がった。そうしていると疲れからか眠気が襲ってきた。ゆっくりと眠りの世界に落ちかけた、その時だ。
「レオ―、夕食よー」
とアエネが扉をノックしながらそう言ってきた。
「おう、今行くわー」
そう言って起き上がると、写真を懐に仕舞い部屋を出てダイニングの部屋へと向かった。
「なんや、呼びに来るなんて珍しいやん」
「今日はちょっとこき使ったから労ってあげてるの」
「へいへい、さよかー」
と言っているとホテルスタッフが夕食を運んできた。テーブルの上に所狭しと並べられた料理を前にして、レオパードは席に着く。アエネも席に着けば、食事を始めた。レオパードの少々マシになりつつあるテーブルマナーを見ながら、アエネは完璧なマナーで食事を進めていく。
「で、明日も買い物か?」
「そうよ、文句ある?」
「まぁ、ええけど……昼飯は今日みたいなんがええねんけど、どや?」
「そうね、お昼くらいならいいわよ」
「マジか!やったで!」
「そんな喜ぶ事?」
「おまえの好きなもんが暫く食べられんと思てみぃ、それと一緒や」
「あーそんな感じなの?」
「まぁ、ええがなそれで」
「ふーん」
そんな事を言いながら前菜にスープ、メインディッシュにデザートと一通り食事を終えると、レオパードは席を立ち、
「じゃ、部屋戻っとるわ、なんかあったら呼びよー」
とだけ言い残してレオパードは部屋へと戻った。
ソファに座り込むと古びた本をトランクから取り出して読み始めた。そうしていると寝るのに良い時間になり、本を閉じ立ち上がると部屋から一番近いバスルームへと向かった。シャワーを浴び着替えると、部屋に戻りベッドに潜り込むとゆっくり眠りの世界に落ちていった。
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