第14話
次の日の朝、レオパードは日の出と共に目を覚ました。少し寝足りないと思いながらも、起き上がり着替えて防寒着を着ると顔を洗って朝食の時間まで待つ。昨日ソファテーブルに置いた、読みかけの古ぼけた本を手に取り読み始めた。
すると扉をノックされた。昨日と同じ様にホテルスタッフが朝食の用意が出来たと伝えに来た。コートを羽織りホテルスタッフに礼代わりにチップを渡して昨日夕食を取ったダイニングの部屋へとやって来た。部屋は相変わらずアエネの服で散らかっていたが、触るとアエネが怒るのでそのままにしておく事にした。
アエネは一番広い寝室から欠伸をしながら出てきた。白いフリルの付いたシャツに紺のミニスカート、黒の二―ソックスに黒のロングブーツ姿だった。
「おはよーさん」
「はいはい、おはよう」
そう言って席に着くと、既にテーブルに並んでいる朝食に手を伸ばす二人。
「それで今日はどこまで行くの?ていうか何時になったら王都につくのよ」
「せやな、五日くらいとちゃうか?」
「そんなにかかるの!?」
「せやで」
当然の事を言う様にパンにバターをたっぷり付けて頬張るレオパード。そして茶を飲む。
「確かにお父様から預かったお手紙は十一個あったけど、全部がこういう風にホテルで使うって事?」
「伯爵様のお嬢様が泊るって前もって連絡しとったんやろ?せやからこうやって高いスイートルームなんかに泊れるんや」
「あと五日かぁ……王都に早く行きたいのに」
と言いながらケシナジュースを飲むアエネに、レオパードは、
「お嬢がもっと早う用意出来てたら今頃王都やったやろな」
「それは言わないでよ」
そう言い合いながら朝食を終わらせると、アエネは広げていた服を慌てながら無理矢理トランクに詰め込んでいく。それが終わると小さな革鞄に、伯爵からの手紙とそれとは別の手紙を入れるとを持って部屋を出た。大きなトランクを昨日の馬車に積み込んでいる間、アエネは受け付けで、
「これをコラドリス伯爵に届けて欲しいの」
と緑の蝋封のされた封筒を受け付けの係員に手渡すアエネ。それを恭しく受け取ると、
「確かにお預かりしました」
そう受付の係員が礼をした。
用意が整うと、二人は馬車に乗り込みホテルの前から馬車を走らせ、この街を出て行く。舗装された石畳の道から砂利道へとまた変わる。そうしてがたがたと揺れる馬車。レオパードは馬車に乗り込んでからずっと古びた本を読んでいた。
それに対してアエネは鞄から手鏡を取り出して入念に髪形をチェックしていた。それに飽きると窓の外の景色を眺め牧草地帯を眺めるのだった。
それから陽が沈むごとに比較的大きな街のホテルに馬車を停め、アエネが受け付けで伯爵からの手紙を渡すとそのホテルで最上級の部屋に案内され、豪華な夕食を取ってシャワーを浴びて眠りにつく。
アエネは毎日父親宛に手紙を書いては、ホテルの受け付けの係員に渡していた。
それを五日間続けていった。
南に進むごとに気温も上がり、レオパードは着ていた防寒着を脱ぎ、アエネは分厚いコートから薄手の上着に着替えていった。
そうして五日かけて王都へとやって来たのは陽の傾き始めた夕方の始まる頃だった。
王都グアニラはこのグアライド国の首都で、国家元首である国王アネクテンス三世の居城のある城下町でもある。国の丁度中央にある事から東西南北の品物が流通に乗って王都グアニラに運ばれて来る。この場所に遷都する前はドナンズが王都だったのだが、百五十年前に起きた戦争で今の場所に遷った。
それからというもの、ここグアニラには国の北から南から、西から東から、様々な人間や物が集まる様になったのだった。
碁盤の目の如く整理された区画で街を整え、流通や警備などがしやすい様に整えられた街である。
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