第13話
そうして時折休憩を挟みながら、今日の宿のある街へとやって来たのは夕暮れの頃だった。
石畳の道を走りながら、その街で一番高級なホテルの前に馬車を停めると、二人は馬車を下りた。荷物の大きなトランクをボーイ達が下ろしながら受付に向かうと、アエネは一通の手紙を受付の係員に渡した。それを見ると係員は「ようこそおいで下さいました」と慌てた様子で二人を離れのスイートルームへと案内した。下ろしたトランクも運び入れると、レオパードが「ありがとーな」と言って扉を閉めた。
何故手紙一つでホテルのスイートルームへ入れるかというと、伯爵が事前に予約し宿泊金額を支払っているからだ。ここから王都までの道のりで、あらかじめ決めた街ではこうして予約済みのホテルへと手紙一つで泊まる事が出来る。
金持ちだからこそ出来る事だ。
そこはスイートルームという事だけあり、バスルームが二つ、寝室が五つある大きな部屋だった。
「しっかし、広い部屋やなぁー」
「基本的に私がほとんど使うからね、レオ、アンタはこっちの隅の部屋から出て来ない事!いいわね!」
「へいへい、んで風呂はここのだけ使えっちゅー事やろ?」
「分かってるならいいわ、それじゃ夕食が運ばれてくるまで出て来ないでよね」
「へいへい、了解ぃー」
そうして一番狭い、といっても伯爵の屋敷で宛がわれた豪華な部屋くらいの大きさの部屋にレオパードは入ると、トランクを置いてコートを脱ぎソファに掛けると、そのソファに座り込んだ。
「あー……相手すんのめんどくさぁー……」
と呟くのだった。
そうしていると夕食が運ばれ来た。わざわざそれを知らせにノックしに来るホテルスタッフには礼代わりのチップを払うと、レオパードはダイニングになっている部屋へとやって来ると、
「何勝手に来てるのよ、呼びに行くまで待ってなさいよ」
「お嬢に任せたら何時までも呼ばへんやろ」
「あ、バレた?」
「まぁええわ、んじゃまぁ、さっさとメシ食おうや」
「ま、しょうがないから一緒に食べてあげるわよ」
「相変わらずやなー」
部屋を見渡してみると、アエネのトランクから出した洋服が山の様にソファに並べられていた。それを見てレオパードは、
「ちったぁ片付けーや」
「良いでしょ別に」
「ええけど、明日出る時には片付けーよ」
「それくらい分わかってるわよ」
そうして運ばれた最上級であろう料理を二人向かい合って食べる。ここ数日伯爵と夕食を共にしていた事もあり、ある程度のテーブルマナーが整ってきたレオパード。それに感心しながらもまだまだだなと思うアエネ。前菜からスープにメインディッシュと続いてデザートのフルーツを食べ終え、そうして夕食を終えるとレオパードは、
「部屋に戻ってるわ、なんかあったら呼べよー」
そう言い残して席を立つと、部屋へと戻っていった。
部屋に戻ると、ソファに座ってトランクから古びた本を取りだすとのんびりと読み始めた。そうして時間が経つと、軽く伸びをして風呂の用意を始めた。用意が終わるとレオパードのすぐ近くにあるバスルームに入ってシャワーを浴びると、着替えて部屋に戻り、フカフカのベッドに潜り込んで眠ってしまうのだった。
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