第7話

 その時だ、

「貴方たちが傭兵?」

 突然、少女が姿を現した。

 年は十五歳を過ぎた頃だろう、金糸の髪を左側で結んだサイドテールにアメジストを思わせる紫の瞳、フワフワとした素材でできた白のセーターを着て短い青のプリーツスカートの下は白のニーソックスに踵の高い青のヒールを履いていた。

 突然の登場に驚く三人と使用人。

「お嬢様、お会いするのは明日と申し上げた筈です」

「だって、見たかったんだもーん。それで誰が私の護衛?貴方だったら嬉しいんだけど」

 ラインドを指さしながらそう言う少女に、ラインドはポリポリと頭を掻く。それを見てレオパードがゆーっくりと手を挙げた。

「え!?貴方なの!?ちっちゃいじゃない、私より背の低い男なんて私と釣り合わないから却下よ!」

「伯爵様が決めた事なんで」

「全く、お父様ったら解ってないわねぇ~もう!文句言ってくる!」

 そう言うと少女はプンプンと怒りながら、レオパード達の通った扉を潜り屋根の付いた廊下をヒールをコツコツと音を立てながら歩いて行った。三人はそれを見送ると、

「あれがお嬢様?」

「気ぃ強い系かーめんどいなぁー」

「いや、あの子とは限らないでしょ、ねぇ?」

 ラインドが若い使用人をチラチラと見ながら聞いてみるも、

「先程の方が護衛をお願いするお嬢様です」

 と申し訳なさそうにしていた。

「そ、そうなんだ、あは、あはは」

「まぁ、ええわ、早う部屋行こ」

「……そうだな」

 若い使用人はため息を一つ吐くと、歩き出した。三人もそれに付いて行く。大きな階段を上って二階に来ると廊下を進み、一つの部屋の扉を開いた。

「こちらと向こうの二部屋をお使いください。鍵は部屋を入ってすぐの棚にございます。何かありましたら遠慮なくお申し付けください」

 そう言いながらもう二つの部屋の扉を開くと、若い使用人は「それではおくつろぎくださいませ」と言ってその場を後にした。

「うはー!豪華な部屋!こんな所使えるなんてラッキーだよな!」

 等と言いつつ部屋に入ってはしゃぐラインドに対し、

「なら、俺は隣を使わせて貰おう」

 と言うセルバに、

「じゃー俺ははその隣な、ちょい眠いから寝させてもらうわ、朝早う起きて寝不足やねん」

「えー、今までどんな仕事してきたとか話し合おうぜ~」

「後でなー」

 レオパードがそう言うとラインドは「しょうがないなー」と言いながら荷物を下ろして扉を閉めるのだった。レオパードが部屋に入ると昨晩泊った屋根裏部屋とは違い、広々とした部屋に大きなソファ、磨き上げられた窓ガラスにフカフカで清潔なベッドが部屋に鎮座していた。小さなトランクをソファに置くと、入り口入ってすぐの棚にある鍵を取れば、内側からガチャリと鍵を閉めた。万が一ラインドがちょっかいを掛けに来ても追い返せるようにだ。

 そうしてコートと防寒着を脱ぐと、いそいそとベッドへ入り、疲れていたのかレオパードはすぐさま眠ってしまった。

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