第2話
夕食の時間になって漸くベッドから起き上がると「しもた、昼飯食いっぱぐれた」と呟きながら、眠っていたらしく大きな欠伸をしながら伸びをする。そうして椅子に掛けてあったコートを手に取り着込むと、宿の隣の先程の飲食店へと向かった。
「いらっしゃい!あら、来てくれたのね、うれしいわ」
店に入ると先程の女性が声を掛けてくれた。レオパードはカウンターに腰掛けながらその女性に向かって、
「お腹減ったわ、なんかここの名物ってあるん?」
「そうねぇ、牛肉の煮込みとかが有名かしらね?それで何か分かったの?」
「なーんにも。ここには来てへんのかもしれんなぁー」
「そうなの、残念ね。それじゃ牛肉の煮込みに蒸し野菜のセットなんてオススメなんだけどどう?」
「それでたのむわー」
と言うと女性は厨房へと向かって行った。戻って来ると、カップを片手にしながら、
「はいリーゼ茶、熱いから気をつけてね。それにしても子供一人で旅なんて物騒よ、保護者が一緒でなきゃあたし心配」
「あー……俺一応十九歳やねんけど」
「あら?そうなの?もっと下かと思っちゃったわ」
「別にええで、慣れとるから」
女性は「ごめんなさいね」と言いながら他の席の注文を取りに行った。
そうしてやって来た牛肉の煮込みは熱々で、しかも口に入れた途端肉がほろほろと口の中で蕩けていく程に煮込まれていた。名物になるのも分かる味だった。舌鼓を打ちつつ冷めない内に蒸し野菜も頬張るレオパード。蒸されたことで甘さが増した野菜たちがシャキシャキと良い歯ごたえをしながらスルリと喉の奥へと落ちていってしまう。時折リーゼ茶を飲みながら、牛肉と蒸し野菜を堪能するレオパード。
最後に茶を飲みながら満腹になった満足感から、ほっと息を吐く。
「どうかしら?」
先程の女性がカウンターへとやって来てそう尋ねてくる。
「めっちゃ旨いな、名物なん分かるわ!」
「そう言って貰えると嬉しいわ」
「で、おいくらなん?」
レオパードが懐を探りながらそう聞くと、
「千八百ルーレルのところを千五百ルーレルでいいわよ」
「ほんまにお得やな~ええ店やわ~」
「あら嬉しい」
レオパードは言われた料金を女性に支払うと「また来るわ」と言って店を出た。
冷え込む夜の街をもう一度人探しの為に回る事にしたレオパードは、昼間も行った飲み屋街へまた足を向ける。通りを進むと、昼間よりも多い数の人々が酒を飲み交わしていた。その内の一軒に入ると、店の店長らしき人物を見つけ話をしてみる。
「おいおい、ここは子供の来る所じゃないぞ」
と昼間と同じことを言われたが、それをスルーして、
「飲みに来たんちゃうねん、人探しててな、この人見た事無いか?」
そう言いながら写真をみせるが、
「………知らないねぇ」
「そうかー……ありがとーな」
店長に対してそう言うと、次の店へ向かった。
そうして次の店でもその次の店でも「知らない」「見た事無い」という言葉の連続だった。
半ば呆れめかけ最期の店に入って聞いていたその時だった。客の一人が、
「見たことあるかもしれない」
と言い出した。
「それはどこでや?詳しく聞きたいねんけど!」
「あーこの間まで王都の近くに居たんだけど、そこで似た背格好のを見た気がする」
「王都……かぁ」
「よく似た人違いかもしれないけど、参考になれば」
「ああ、ありがとーな、ちょっと手掛かり掴めたかもしれん。今度王都行く時に探してみるわ」
そう言って客の一人に礼を言うと、少しばかり歩調ゆったりさせながら店を出た。そのまま宿へと進む道すがら、遅くまでやっているパン屋を見つけたのでそこへ入り、でパンを数個買うとまだ暖かいそれが冷めない内にと宿へと戻る。
そして宿の三階の屋根裏の様な部屋へ入ると、コートを脱ぎ椅子に掛けると、小腹が空いたのかまだ暖かいパンを頬張る。カリカリとした触感のプレッツェルや柔らかな白パン等を食べ終えると、防寒着を脱ぎ、コートと同じ様に椅子に掛けると、薄いシャツ姿で分厚い毛布のベッドへと潜り込んだ。そうしてゴロリと横になっていると睡魔が襲ってきて、そのまま眠りの世界に落ちていった。
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