ep2.大事な話

「新しい冒険者さんは、まずは冒険者ギルドに行くみたいですよ」


「ああ、そうだな、行ってみる」


 ID登録、ユーザーネームの決定、無料ガチャを引く——

この世界がダクフェなのであれば、手順はすべて頭に入っているが、俺は何となくすべての手順の説明を聞いた。


 話していたかったのだ。


「ルル、ありがとう」


「いいえ、とんでもないです!最近は、新しい冒険者さんも減っちゃって……あなたが来てくれて嬉しいですよ」


 そうか、新規ユーザー獲得がこのゲームの課題だったな……そんな事が頭をよぎる。


 そんな中、突然穏やかだった街がざわめきだした。

 妖精たちの悲鳴や、ユーザーであろう冒険者の声も聞こえる。


「なんだ?!」


「これは…魔族たちがまた攻めてきたんだと思います。

ここは危ないです、冒険者ギルドの中に逃げましょう!」


 そうだ。

 この世界のシナリオは、「魔族」と「妖精族」の戦争を描いている。

 かなりシリアスなシーンも多く、思いがけずメインキャラやサブキャラが死んでいくシーンなんかも少なくない。


 俺はハッとした。

 確か、次のアップデートで入るメインシナリオでは、ルルが魔族に捉えられた末、死亡する。


 ……この世界がダクフェのシナリオに沿っているならば。必ず起こる出来事だろう。


 メインシナリオの公開までたしかまだ三日はあったはず。

 すぐにではないが、このままではメインシナリオが公開された時点でルルの死は確定してしまう。


 怪訝な顔をしていたのだろう、逃げながらルルは顔を覗き込み、心配そうに呟いた。


「……不安ですよね、大丈夫ですよ、いつものことなんです。ほかの冒険者さんたちがきっとうまく収めてくれますよ」


「なあルル、ちょっとこの後、大事な話がある」


「ええっ、だいじな、ですか?それってどういう……」


 頬を染めながら戸惑うルルに、俺はいやいや違う違う、と手を振った。


「ルルの将来のことで……」


「そっ、それってどういうこと、ですかああ!?」

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