ep3.真実と告白
とりあえず、話さなければ。
ルルに、真実を。
信じてもらえるのか?
そもそも話したところで、死の回避なんてできるのだろうか?
ここがダクフェの世界なのだとしたら、この世界の住人は、すべてのシナリオが決められていて——
その運命も知らずに、彼女たちは争い、苦悩し、助け合いながら、生きているのだ。
「本当に大丈夫ですか?ここまで来れば、もう安心ですよ!」
ルルが目の前にある冒険者ギルドの扉を指差した。
「ここは、新しい冒険者さんが被害に遭わないよう、魔法で強力なバリアが張ってあります。
ここにいれば、怖い目に遭うことはありませんから。
ええと、まずは手続きしてもらって……」
「うん、ありがとう。あのさ、さっきの話なんだけど……」
登録書を書きながら、真剣な顔でルルを見る。
「はっ、はい!」
「ちょっと、ギルドの部屋で話したくて…誰にも聞こえないところで」
「へっ、部屋ですかぁぁ!?お、男の人の!?」
戸惑っている様子だったが、ルルはもじもじとしながらこっくりと頷く。
「あっ、そっ、そうだ。
あの、冒険者さんのお名前、聞いてませんでしたよね」
「名前か……ユウリ」
「おや、ユウリさんですね。冒険者さん人気ナンバーワンのお名前ですね」
それもそうだ。これがダクフェのデフォルトネームなのだから。
登録が終わり部屋に案内されると、「召喚の仕事はいいの?」とルルに声をかけた。
普段は必ずガチャ召喚の画面にいるが、こういったイレギュラーは起こせるんだな、なんて事を考えた。
「はい。新しい召喚士さんがいるんですよ。私は近々引退なんです」
ルルは簡素な椅子を引き、こちらへどうぞ、といったように手で合図をする。
そうだった。
ガチャ画面の改修で、彼女の死後は別キャラを立てるシナリオだ。
こういった馴染みのあるキャラの死や引退は、上手くやらないとユーザーの反感を買い、ユーザー離れを加速させる。
だが、近頃は刺激を与える事を優先し、一か八かの大胆な施策を強いられていたのだ。
信じてくれるかはわからないし、言うべきかは迷った。
だが手段を選んではいられないだろう。
小さな深呼吸にも似た息を吐く。
ほんの少しの沈黙が流れた後、口を開いた。
「ルルは、魔族に捉えられて、三日後に……死ぬんだ」
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