丸い子

瑠璃

丸い子


丸い子は、はじめから丸かったのだろうか。丸い子は、初めのことは覚えていない。


丸い子は、他の丸い子たちと日のあたる部屋の中で人の声を聞いていた。


何者でもなかった丸い子は、しばらくの間、ずっとの間、他の丸い子とおんなじだった。


しばらくの間、ずっとの間が終わったのは、風の強い日だった。昨日の雨で濡れたアスファルトは、その時には乾き始めていた。


丸い子は、その日、「ある人の丸い子」になった。


ある人の丸い子を、ある人はとても気に入っていた。


ある人にとって、丸い子はとても大切なものになった。


また、「ある人の丸い子」は「あの人の丸い子」とそっくりで、「ある人」と「あの人」は2人でそれぞれの丸い子を大切にした。


「ある人の丸い子」と「あの人の丸い子」は、2つで1つであり、遠くにいても2人は繋がっているようだった。


丸い子は、しばらくの間とずっとの間が終わった時、「あの人の丸い子」になった。


丸い子は世界を見た。


「ある人」は丸い子をいろいろなところに連れて行ったし、片時も離れることはなかった。


丸い子は、「ある人の丸い子」が終わる時が来るのかと考えた。


しばらくの間とずっとの間、丸い子が丸い子であったとき、その時は終わりがやってきた。


「ある人」は、丸い子の芽生えたばかりの気持ちを見て、丸い子を撫でた。


「丸い子はいつまでも一緒の私の丸い子だよ」


丸い子は、「ある人といつまでも一緒の丸い子」になった。

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丸い子 瑠璃 @lapislazuli22

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