1-2 名無しの猫と量子の猫
冷たい風が路地裏を駆け抜ける、そこには一人の青年がいた。黒く短い髪、背が高くガッシリとした体格の彼は右手にガチャガチャと音の鳴る大きな袋を持っていた、中はほとんどがガラクタだ。時代がもう少し前であればまだ少しは価値のある物だっただろう、しかし袋の中身はこの時代では正真正銘『ゴミ』である。例え自分で使うものだとしても、精々古い家電製品や時代遅れのガソリンエンジンのバイクの補修が限界だろう。
西暦2350年、世界は奇跡的にも第二次世界大戦以降の戦争を起こすことなく最低限の平和を維持してこの時代に至っている。そして、時代が移るにつれて人類の
この手術を行うことで人類は旧時代のデバイス、ケータイや電子パッドと呼ばれていたものを必要とすることは無くなった、通信機能を人体の神経系に接続することで衛星を通して通信、通話を可能としているからだ。古くから人類は自身の持ち物を小さく、少なくすることを求めて日夜励んでいた。長年の研究の成果か、これにより人類はそのほとんどが街中を手ぶらで歩いている。
かく言うこの青年もその手術を受けている。手術で彼の両腕にはサイバーガジェット『オオクニ』が装着されている、このガジェットは彼の腕力を超強化するものだ。常人では持つことの出来ない車両を片手で持ち上げられるほどにはなれる、しかしそれはあくまで『高級品』ならばの話、彼は決して裕福ではないため彼のガジェットは『粗悪品』なのだ。どんなに出力を上げても冷蔵庫が両手で軽々と持ち上げられる程度しか出ない。
「他に金になるものねえがな」彼の口から愚痴が地元の訛りを含み零れた。捨てられたガラクタの中に、はるか昔にこの地で使われていた地名の書かれた看板が見える。
秋田—――100年以上前まで使われていた地名だ。現在は名前だけが形を変えて「アキタ」となっている。ちょうどインプラントが流行り出した時に変わった。地図で見てもさほど大きくは無い、かつては『日本』にあった47の都道府県の一つだったが地球の環境が年々大きく変わりだし、四季と呼べるものは面影すら残さないほど気候は変化した。その影響から事態を重く見た日本政府は100年前に大胆な・・・いや、だいぶトンチキな政策を打ち出した。
「現在の日本にある47都道府県を規模を縮小、現在の半数ほどにまとめる法案」
Nora ~愛と迪ォ縺ョ莠コ鬲壼ァォ~ ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Nora ~愛と迪ォ縺ョ莠コ鬲壼ァォ~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます