水曜日のおっちゃん


週の真ん中の水曜日。

一週間は七日あるのに、休みが二日しかないのはおかしいと思う。

一日働いた分、一日しっかり休むべきじゃない?

月曜、火曜と仕事を終えて、水曜日にはもうガス欠だ。

さて、木曜、金曜をどう乗り越えるか。

餃子だ。わたしの体は餃子を欲している!


「おっちゃん。醤油ラーメンと餃子。」

「あいよ!」


いつもこの組み合わせ。

最高おぶ最高。


最寄りのバス停のひとつ前で降りて、少し歩いたところにあるラーメン屋。

赤地に白文字で書いてある店名は薄れていて、年数が経っていることを感じさせる。

正直なんでこんなところに、と思うほど駅からは離れてぽつんと佇んでいる。

それでも潰れずにあり続けているということは、地域の人に愛されているお店なのだろう。

ここの醤油ラーメンはスープの色がかなり濃い。

濃過ぎて、輝かしい黄色の中華麺が最後には茶色に変わっている。

最初に頼んだ時は食べ切れるかなと心配になったけれど、それは杞憂だった。

見た目とは反してかなりあっさり。

最後まで飽きずにペロリと完食できる。

それだけでももちろんお腹いっぱいになるのだけど、やっぱり餃子は外せない。

間違えて多く焼いちゃったからとこっそりサービスしてくれたのが最初。

この餃子、生姜がガツンと効いている。

肉というよりキャベツのジューシーさ。

お酢をつけて食べると、よりさっぱりした味わいになる。

ラーメンと一緒に食べても全然しつこくならない。


そして今、麺をを湯切りしてくれているおっちゃんがまた最高なのだ。

おそらく50代後半。

スキンヘッドで目力が強いから怖そうに見えるけど、話すとめちゃくちゃ優しい。

そしてよく笑う。

このギャプがたまらない。


「醤油ラーメンと餃子お待ち。」

「いただきます。」


「おっちゃーん、こっちも餃子ちょうだい! あと半チャーハンも。」

「あいよ!」


先にラーメンを食べていた、向こう側に座っているお客さんが追加で注文する。

長年中華鍋を振ってきたであろう逞しい腕。

もしおっちゃんと腕相撲をしたら、そこらへんの成人男性では話にならないだろう。

見事におっちゃんの手によってパラパラに仕上がったチャーハンが光輝いて見える。

おっちゃんの作るチャーハンも絶対美味しいはず。

今度頼んでみよう。


「おっちゃん元気やった?」

「おうよ。兄ちゃんは仕事忙しいんだろう?」

「まあ、ぼちぼち。なかなか食べに行かれへんから、もうガス欠やったわ。」


わたしと同じようなこと言ってる。

確かにここのラーメンと餃子は、走るための燃料みたいな感じだよね。

多分あの人と話し合うわ、うん。


「あっはっは。じゃあたーんと食って満タンにしてってくれい!」

「おっちゃん相変わらずやわ。もうこれ以上俺の胃袋掴まんといて。」

「はっはっはっ!」


あれだけの目力だったのが笑った途端、クシャッと目尻にシワを寄せて愛嬌を振り撒く。

ほんと豪快で、かっこよくて、温かい人だなぁ。

おっちゃんの作るラーメンと餃子で胃袋を掴まれて。

さらにはその笑顔で、心までがっちり掴まれてます。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

推しメン日記 @kikka16

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ