モテ期到来
第17話 新しい出会い
視線を感じて、そんなに明るくない小洒落た店内を見回した。真っ直ぐに私を険しい眼差しで見つめる男がいた。‥橘征一。私はこんなところでバッタリ会った事もそうだし、こちらを睨んでる?のも解せなくて、戸惑ってしまった。
でも関係ない。今はプライベートな時間だ。向こうだって、何人かの男女で来ていて、パッと見たところでも女性たちの橘征一への媚びた顔が分かるくらいだ。ハーレム?結構なことね?私はイライラして、顔を戻した。目の前のコンサルの男性の話が頭の中を素通りしていった時、翼から声が掛かった。
「席替えしまーす。美那こっちね!」
そう言って呼びかけられて、私たちは各々グラスを持って移動した。私の目の前には、いかにも体育会系の爽やかな男性が座っていた。確か、今日の男性側の幹事で、商社マンの野村さんだったか…。
「さっきも自己紹介したけど、改めて野村です。四つ菱商社で、営業やってます。えっと、田辺美那さんだったかな?」
私は世の中の人が想像する商社マンと言ったら、野村さんみたいな人なんだろうなと思った。やわらかい人好きする垂れ目の目元とツーブロの短髪を眺めて、少し面白い気持ちで微笑んで答えた。
「ええ、もう名前を覚えて下さったんですか?すみません、私、野村さんの下のお名前さっき聞き逃しちゃって…。」
私の顔をじっと見つめていた野村さんは、ハッとすると頬を指先でなぞりながらはにかんで答えた。
「野村裕樹です。ありふれたユウキです。ハハ。俺、ずっとアメフトやってたんだけど、ユウキって奴五人はいましたからね。好きなように呼んでくださいね。今日、清水さんに食事会企画してもらって俺、凄い感謝してるっていうか。
仕事が忙しくて、中々出会いの機会も時間もなくて。でも俺、そろそろ真剣に女性とお付き合いしたいって思ってたんです。あー、俺ってばいきなり重い話しちゃいましたね。‥でも田辺さんはさっきから周りの人の話すごく楽しそうに聞いていて、素敵な人だなって思って。
うわっ、俺、何か舞い上がってるかも! 田辺さん綺麗すぎて、俺テンパっちゃってる…。」
そう言いながら片手で目元を隠す野村さんは、ちょっと可愛らしくて、私は好感を持った。やっぱり商社マンって人種は、人たらしかも知れないな。私はクスクス笑うと、野村さんに言った。
「私も最近ついてなくて、気分が落ち着かなかったので、今日は翼に誘われて来てよかったです。仲良くしてくださいね。」
そう言って、少し顔を赤らめた柔らかな眼差しの野村さんの目を見つめてにっこり笑った。
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