第16話 翼sideお食事会

今日の食事会はやっぱり当たりだった。連れてきた女子たちも満足そうだ。異業種交流サイトで知り合った幹事の野村さんは、いかにも体育会系の爽やか青年だ。年齢も若すぎず、ノリの良さもある27歳。連れてきた友人たちも、同僚の同じ商社、コンサルや、外資系銀行とスペックは高い。


幹事の私としても、自慢の出来る美那を始めとして、綺麗で、優秀な女子たちを連れてきたのでバランスは取れてるだろう。野村さんの選んだ店も、女子の好きそうな綺麗な料理と、お酒の種類も豊富で、また来たいイタリアンだ。



「野村さんはセンス良いですね。こんな素敵な店、知りませんでした。」


野村さんは、皆を見回してから私を見つめると、頭をかきながら言った。


「実は、この店は友人に以前教えてもらってたんだ。俺はあんまり詳しくなくて、この店なら絶対デートにいいぞって言われてたから、今日お披露目したってわけ。ハハハ。」


交流サイトでも飾らない性格の良さが滲み出していた野村さんは、好感度が高いと思った。おっとりした美那にどうだろう?結構相性は良さそうだけど。そう思いながら、場が盛り上がって話が弾んできた頃に、目の前の野村さんにこっそり聞いてみた。



「野村さんは、誰か気に入った子いましたか?幹事の特権で、良かったら取り継ぎしますよ。」


すると、野村さんは少し目を彷徨わせて言った。


「…俺にはみんな高嶺の花だけど、あの黄色いワンピースの子、田辺さんだっけ?さっきから聞き役になってて、派手に見えるけど、そうでも無いのかな?」


私は、誤解されがちな美那を良くみてくれていた事に嬉しくなって、思わずニヤついて言った。



「野村さんは、人を見る目が有りますね。今日連れてきた子は皆んないい子ですけど、美那は掘り出し物ですよ。派手に見えますけど、男っ気ないんですから。ああ見えて初心なんですよ。」


急に真面目な顔になった野村さんは、美那を見つめて言った。


「俺、真剣に交際できる相手を探してるんだ。今回は仲良くなった清水さんが食事会に誘ってくれて本当に感謝してる。」


私は野村さんの眼差しの熱さに、席替えの声を掛けようとした時、美那が近くの別テーブルを険しい顔で見つめているのに気づいた。美那にあんな顔をさせるなんて、珍しいと思った私は、美那の視線を追った。そこにはやはり険しい顔をした見るからに他とは明らかに一段とスペックの高い険しい顔した男が、美那を苦々し気に見つめていた。

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