第2話

 俺はオタクだ。アニメが好きだ。特に異世界ファンタジーが好きだ!

 リ〇ロ、転〇ラ、この〇ば・・・etc、全部好きだ!

 最強の力で無双して、最高にかわいい女の子と夢と冒険の旅に出る。誰もが憧れた異世界への道。そして、そんなオタクの夢は現実となった。


 青い空に見たこともない広大な草原、雲の影がゆっくりと動いていく。やさしい風が俺の頬を刺激した。

 空気を一杯吸う。煙草を吸ったことはないが多分、この空気の方が絶対においしいだろう。俺は思いっきり肺にたまった空気を吐いた。


 \スポン/


 鼻から何か飛んで行った。それは草むらに紛れ込み、もう見つけることはできなくなった。


 「ハナクソ女神め・・・。ようやく取れたぁ。ああーばっちぃ、ばっちぃ。」


 「お困りですか?」


 俺は声のする方向を向いた。

 そこには女の子が一人、立っていた。しかし、彼女はただの女の子ではなかった。

 ショートの金髪、整った顔立ち、透き通るほどきれいな肌、露出度の高いきわどい服。そして、そこからチラりと見えるおっぱい。すべてが俺の好みだった。


 「えーっと(照)」


 生涯童貞で幕を閉じた俺にとって彼女はまさに俺を性的に殺しに来た殺し屋だ。決めた。大魔王倒すのやめてこの子と一生暮らす。


 「申し遅れました!私、ハナクソの女神の加護です!今後ともよろしくお願いします!」


 「え?」


 「はへ?」


 決めた。大魔王倒しに行く。


 「よし、村を探そう!」


 「ちょっとー、無視しないでくださいよー」


 「さぁ、日が暮れる前に出発だ!」


 「女神さまに頼んでハナクソに転生させますよ。」


 「ごめんなさい、どうぞ続けてください。」


 ハナクソに転生されないように一生懸命、彼女の説明を聞くことにした。


 「改めまして、私はハナクソの女神の加護、名前はそうですねぇ、ハナコと呼んでください!」


 「はあ、よろしくお願いしますハナコさん・・・、リョーマです。」


 「私の仕事は基本的にあなたのサポート!私がリョーマの鼻にいる間はリョーマは超人的な力を使うことができます!」


 思ってたんとちゃう。もっとかっこいいのを期待していたのに俺は。

 ん?ちょっと待てよ。


 「え、じゃあもしかして俺がさっき飛ばしたハナクソって・・・」


 「そぉーです!私です!」


 「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁぁっぁ!」


 俺は受け止めきれない現実を前に叫ぶことしかできなかった。それはこの草原いっぱいに広がり、やまびことなって帰ってきた。


 『そんなに悲しくならないでくださいよ!できれば私だってあなたの鼻の中に入りたくないんですからね?』


 こんな美人がハナクソだなんて・・・。この話を聞く前の俺は幸せ者だ。世の中世知辛い。現実はそう甘くないらしい。


 「むむ!?800m先からもうスピードで接近してくる物体があります!早速実戦ですね!」


 そういうと彼女は小さな黒い物体へと姿を変えた。


 「ま、待ってく・・・!!」


 その黒い物体はお察しの通り俺の鼻目掛けて飛んできた。


 「ふごぉ!?」


 鼻がむずむずする。しかし悔しいが、違和感はない。


 『少々、形をリョーマさん専用に改造しました!ベストマッチですね!』


 「やかましいわ」


 北東の方から何やら地響きが聞こえてきた。その方向を見ると何かの大群がこちらへ向かってくる。

 

 『目を凝らしてみてください!今なら加護の効果で望遠鏡並みの視力が使えますよ!』


 ハナコの言う通り、その方向へと目を凝らした。


 「な、なんだぁありりゃ!!!!」


 その大群の正体はなんと・・・

 ビーバーの群れだった。それもただのビーバーじゃない。3メートル近くあり、可愛らしい見た目とは裏腹に真っ赤に充血した目に口には鋭い牙があり血まみれ。


 『あれは『人食いバービー』ですね。危険度は100ぐらいでしょうか』


 「危険度100ってどのくらいなんだよ!」


 『この世界で一番危険ってことですね!』


 「やべぇじゃねぇか!早く逃げるぞ!」


 『大丈夫!あなたなら勝てます!なんせハナクソの女神の加護をお持ちなんですから!』


 「だから、信用ならねーっての!」


 俺は逃げようと北東の方角に背を向けようとしたが、体がいうことを聞かない。


 『大丈夫私を信じて。』


 俺は体の思うがままに右手を北東の方角にかざした。手が熱くなってくるのを感じる。なんなら青白く光り始めた。

 北東からは土埃が大きくたっているのが見えた。ビーバーの大群が見えるところまで来ている。


 「おい!どうするんだよ!すぐそこまで来て・・・」


 瞬間、俺の周りを稲妻が走った。俺の足元には魔法陣が形成されている。俺の右手はさっきよりも激しく光っている。


 『それではご詠唱ください!』


 『『ハナコスペシャル』!』


 俺の右手から光の玉が放出された。それはまっすぐ人食いビーバーの群れに向かって飛んでいく。それは着弾したと同時に大きな爆発音とともに視界がまぶしくなるほど閃光した。

 そして人食いビーバーの群れはその光が消えたと同時に姿を消した。


 『生きとし生けるものを無へと返すハナコの必殺技、それが『ハナコスペシャル』。決まったぜい。』


 ハナコは自慢げに言った。


 「・・・ハナクソの女神の加護、強すぎだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」






 


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鼻糞伝説 VAN @loldob

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