第8話 黒い集団 その4

「俺を探していたって、どういうことだ? こんな狭い世界なのだから、手荒な真似をしなくともよかったのでは。」


ここでなぜかカー署長の反応を思い出した。


(カー署長はこうなることを知っていたんだな。だからあんならしくない言動をしていたんだ。)


ジュンはゆっくりと起き上がる。少しふらつくと、後方に立っていたアンドロイドが支えてくれる。


(このリーダー格は、やばそうなプログラミングをされているみたいだし。今、俺を支えてくれた奴は仕置きされるんじゃないか?)


自分の敵である可能性が高いのにも関わらず、無事を祈ってしまう。

体を支えたことを目ざとく見ていたらしく、ジュンの後ろにいたアンドロイドを睨み付けている。

五感や頭脳では、アンドロイドにかなわないのをよく分かっていたジュンは、解放してくれるまで従うしかないと覚悟を決めた。


「睨むなよ。立ち上がるのを手伝ってくれただけだ。」


そう言うと、リーダー格のアンドロイドは今度はジュンを睨む。


「私の命は絶対なのです。彼には行動を許していません。」


今すぐにでも手を出しそうな雰囲気にいたたまれない気持ちでいると、リーダー格のアンドロイドは、急に顔をジュンに近づけると瞳を覗き込んでくる。


「やはり、あなた様で間違いない。」


そう言って口角を上げている。

どうやら虹彩のスキャンをして確認をしていたらしい。


「無礼なことをしておいて申し訳ありませんが、少しの間私たちと行動を共にしていただきます。」


人に頼み事をするにしては高圧的な態度だ。

何気に目が留まった、デザインも着用箇所も決められているらしいピンバッヂ。

襟元のピンバッヂは、彼らを使用している組織のものだろう。

整備という仕事柄、様々な所に出向いているが、組織表の中で見た記憶がない。


「聞きたいことがあるんだけど。」

「何でしょうか。」

「その襟元のピンバッヂに刻まれた組織に属しているのだろう? 見たことがないが何という組織なんだ。」


ジュンの質疑に、目を大きくし口角を上げる。何とも不気味な感じがして慣れない。


「そんなことよりも、私はこの部屋の外に居た人間の心配をすると思っていました。」


そう言われて、外で待機しているクリスを思い出した。

自分の身に起きた出来事に心を持っていかれ、彼がいることを忘れてしまっていた。


「彼には事務所へ帰っていただきました。手荒でしたが命に別状はありません。」


クリスに己がしたことを思い出したのか、また、ニヤリと口角を上げたのだった。

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