雨霧保―①
傘なしでは外を歩けない程度の小雨の中、俺、
俺は漫画家だ。と言っても連載している作品もなければ、書籍なんて一冊も出版していない。インターネット上の投稿サイトに、一週間に一回くらいのペースで漫画を投稿していた。しかし世間はなかなか俺を認めようとしない。大学卒業後すぐに夢を追って漫画を描き始めた。別に大学で美術を学んでいたわけではない。今はバイトをしながらなんとか生きながらえている。
「もう一年経つのか」
どうして俺の描く漫画には『いいね!』がつかないんだろう。流行りの異世界ものだって描いてるし、某雑誌で連載されているような超能力系バトルだって描いてる。なのに『いいね!』どころかコメントもほとんどつかない。向いてないんだろうか。
ユキは、俺がそんな悩みを抱えていることなんて知るはずもなく、目の前をただ一定のペースで歩き続けている。こいつがいなければもっと安いアパートに住めるのは確かなんだが、俺のことを認めてくれるのはこいつだけだ。もう長い付き合いだし、今更手放すなんてこと考えられなかった。
そして、俺は雨が嫌いだ。ここ最近雨が降り続いているので仕方なくユキの散歩に出たが、雨が降っている日は基本的に家から出ない。車を持っていないからだ。買い物や、出版社に漫画を持ち込みに行こうにも、公共交通機関を使わなければいけない。免許は学生時代にとったが、車を買うお金なんてあるわけがなかった。
「あー、早く、一発ドカンと当たんねぇかな……」
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