雨笠達郎―①
私は
「昨日まではあんなに晴れてたのにね。よかった、帰り道だけで」
妻は後部座席から外を眺めている。たしかに、観光中にこの大雨に襲われていたら観光どころではなかっただろう。と言ってもこの大雨の中運転しなければならないのは、全然『よかった』ではないのだが。
助手席では娘が携帯ゲームに夢中になっている。もう中学二年生になるというのに、勉強の方は大丈夫なんだろうか。
「もう春休みも終わりかぁ」
娘が突然口を開いた。ふと目を助手席に向けると、姿勢は相変わらず何も変わっていない。
「なんだ、早く学校行きたくないのか? お父さんが中学生の頃は学校が楽しくてたまらなかったけどな」
「部活は楽しいよ。友達と会えるのもいい。でも勉強はなぁ」
実のところ、それは私も同じだった。部活をするために学校に行っていたといっても過言ではない。
娘は、憧れの先輩がいるとかで、陸上にのめりこんでいる。私は運動なんて体育の授業以外まともにやったことがなかったから、そんな娘が理解できないと同時に、羨ましいとも思っている。
「また雨が強くなってきたな」
これから山道に入る。安全策として山を迂回することもできたが、時間も時間なので早く帰りたかった。この道はこれまでも何度も通ったことがあるので、特に心配はしていなかった。
でも、この日は雨に加えて風もかなり強かった。何度も風に煽られる。
そして、カーブを曲がろうとした瞬間、突風が車を襲った。
「っ……!?」
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