~夜明けの随に~

 



 ――ようやくだった。


 俺たちはようやく、森の外に出た。



 辺りはどこまでも続く草原、遠くに街道のようなものも見える。


 そのさらに奥には、垂直に近い角度で連なる山々――



『夜明けの朝日が森との狭間に立つ俺たち三人を照らす』


 延々と続く草原ですら強く栄え、金色に輝く。



 それはまるで、ここから何かが始まることを暗喩しているかのようだった。




 あの屋敷に囚われたままでは、俺がこの大自然の光景を見ることは永遠と無かったのだろう。



 限りなく続く世界でその光景を見た俺は、あまりの美しさの息を呑み、涙すら溢れてくる。




 これから俺はこの世界に服い、生きていくことになるのだろう。


 これからも数多の困難や障害が、俺の前に立ちふさがり、俺を暗黒へと引き摺りこもうとするだろう。



 でも――


 前世の、嘗ての俺では味わえなかった、他者との関わりによる喜びや悲しみ、そして――


 願わくば、心の強さ、そしてこの世界で生きていく自信を俺に与えてほしい………


 いや、これらは決して天などから与えられるものではない。自分の力で掴み取るものなのだ。


 決心を新たに、俺はこの世界で歩み始める。





 ミーニャが俺を抱きかかえたまま、耳元で囁く。


「私は永遠にあなたに尽くしますよ。主様………」



 その言葉を聞き捨てならないとばかりにフィアルが俺の胴体に抱き着く。


「私は、アルから絶対離れない!絶対誰にもわたさないから!」



 俺に絡みつく二人の少女――


 ――ああ、そうか。俺は………



 俺は今後もずっと――自分ではどうする事もできずに、これからも彼女らに翻弄されっぱなしなのだろう。


 でもこれでいいのかもしれない。




『それは水面の波の随に漂うように』



 ならば、俺も彼女らの手を取り、彼女らのために尽くそう。


 それは俺が彼女らにできる唯一の事なのだ………






 夜明けを標に俺たち三人は進み続ける……




 ――この旅の行方を知るのは、この世界では当の本人たちだけ――



















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