第5話
「今日午前中でテスト終わるって知らなかったぁ!」
掃除中だろ、何してんだよ…
「今食うなwwてかミニトマトありすぎww」
脳の栄養が全て顔面に集まったような女だ
ここまで来ると非常識過ぎておもろい
耳に痛い言葉は聞こえない振りをして、
「ねぇ、今日一緒帰る?放課後カラオケ行こぉ!」
もう遊ぶことしか考えていない単細胞の鑑
「あいつに確認してからだな」
ご丁寧に催促して差し上げた
後ろから冷ややかな視線を感じる
お願いだ、早く逃げてくれ
「あーうん、教室にいると思うから言ってくるね!」
言い終わる前に走り出している
「やばぁ」
クスクスという嘲笑はあの女には届かなくて良い
角を曲がったら誰もいなくなった
親友たちも見えなくなった
鼻歌交じりでスキップする
今の家では鼻歌でさえも許されない
ほんとやになっちゃう
前のとこで我慢してれば良かったかもなぁ
手に持ってたミニトマトを口に放り込む
なんでこんなに甘いんだろう
噛むと口一杯に甘味が広がる
大好き
お、
でもこの子は外れだ、酸っぱい
空いている窓から食べかけを放り投げる
誰も見てないもん、大丈夫
合わないなら、さっさと捨てちゃえばいい
新しいものなんていくらでもある
大声で歌いながら階段を一つ飛ばしで進む
あれ?
廊下に知らない女の子の笑い声が響く
鈴の音のような儚い小さな、でも、めっちゃ可愛い声
あたしは鼓動を抑えて教室のドアを開けた
居なくなった瞬間は地獄
「あの転校生の話って結局マジなん?」
「男子が言ってたし嘘っぽくね?」
「それより、あいつが転校生守ってたの見た?」
「あー、熱いね」
「三角関係じゃんw」
ほらまた言われてるよ…
止まらない悪口パーティー
「あんたは元カノとしてどうよ?」
はぁ、その話題回すなよ
「んーそろそろ捨てられると思う」
面倒なので適当に言った
女子たちは愉快そうに高笑いしている
「あんたらって結局付き合ってたわけ?w」
徹夜で疲れてんのにマジでストレス
「ただの幼馴染って説あるけど」
嫌そうな顔が出ていたかもしれない
女子たちは察したのか、次の標的の話題に移行している
うちらの陰口、あの女は気づいてないだろうな
申し訳ないのか…(?)
疲弊している脳が誤った感情を表す
これに関して罪悪感を持ったことは、一度もない
視線がぶつかる
手に持っていた弁当箱からミニトマトが床に散った
転校生の口から、ふ、という息が漏れるのが聞こえた
あたしは目を背けたくて、下を向いた
涙が込み上げそうだがぐっと怺える
彼が何か言い聞かせているのが視野に入ってきた
悔しくて、唇を噛み締める
「ずっと待ってるから」
その子は意味の分からないことを言い放ち、風のように身を翻して教室を去る
「この荷物届けてくるわ」
彼はあたしを一切見ずに立ち上がって出て行く
「待って!!」
あたしは馬鹿だ
何をしたら彼を止められるか判断出来なかった
彼の手から荷物が落ちた
気づいたら、彼のネクタイを掴んで引き寄せていた
拒否してくる彼の舌が絡まって離れない
あの子の香りを消したい一心で
振り返った転校生の気配がした
我に返った彼が振り解こうとする前に、あたしは深く口付けをしながら彼を教室に押し込んだ
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