第4話

テストが返ってきた

「これ国際信州学院の?」

「出しやがったな!」

「平均下がるやん」

よく喋るねぇ笑

「え、おまえひっっくww」

「ヤメロオマエ」

「ビー玉うるせぇww」

「てめぇら全員がうるせぇんだよ」

親友が半ギレしてる

恐らくテストが案外難しかったんだろう

あと、睡眠不足も原因の1つ

「最後の、あと1個の象徴とか知らんわ」

優秀なのに珍しいと思いつつ、ここぞとばかりにマウントを取ってみる

「あたしぃミニトマトの方は書けたよー!」

自信満々なのが鼻についたのだろうか

「あーそれ?あんたに似てる馬鹿っぽい子でしょ?」

眉間に皺を寄せられ、毒舌を吐かれた


「うーわこいつ高ぇ!」

「ズルしとるん?」

「担任に泣きついて!?」

男子軍団が転校生の解答用紙を手に持って騒いでいる

転校生は下を向いたまま動かない

「あららぁ、可哀想ぅー笑」

そう言ってられるのも今のうちだな

「あの子どう思ってるんだろー?無反応だしぃ」

とりあえずここは同調しておこう

「最初から男子に絡まれてるから話しかけづらいよな」

ねー、と答えつつ馬鹿な女はあいつを探している

愛しの彼に点数を聞きに行きたいらしい

やけにキョロキョロしてるのが本当にうざい

まぁいいか

この後絶対妬くだろう

娯しみすぎてゾクゾクする

内心ほくそ笑んでいた


なんであいつらは構うんだ?

で、あいつはなぜ反抗しない?

理解に苦しむ

無視して見直しを再開するも、その様子が気になってしまう

男子の口撃が一層激しくなっている

あいつが唇を噛み締めているのが見えた

危ない

このまま放置していたら大変なことになるだろう

俺は意を決して、仕方なく席を立った

「やめろよ」

その声に明らかに不快そうな男子たちが、俺を白けた目で見る

「自分の点数言ってから人のを見ろ」

騒いでいた男子の声が消えた教室に、静けさが目立つ

男子の顔が一気に冷めていく

ただ1人俯いていた顔が晴れるのが見えた


やってんなぁ

あいつはまた転校生を庇っている

お、ようやく発見したか?

やはり悲しそうな顔をして彼氏を見ている

さっきの威勢の良さはどこ行ったんですかー?ww

咄嗟に出そうな言葉を飲み込む

こいつが泣きそうだな

「はぁー?」

「おまえこいつの肩持つん?」

「だってこいつ担任と、」

「昔からあいつは弱い子守ってたから」

流石に見ていられなくて遠くの声を遮る

「いいなぁーずっと一緒だもんねぇ」

弱気な顔を引っ込めて羨ましそうに言う

いや、そうでもないんだなこれが

お馬鹿さんには一生理解できんよ…


俺は男子が押し付けた掃除を秒で終わらせ教室に戻ってきた

あいつがいた

担任に言われていた花の水やりをしている

呑気なものだ

やばい

こっちを振り返る目に捕まる

俺はその目から逃れられないことを知っている

また2人になってしまった

「大丈夫か?」

逃げたい一心で急いで口を動かした

何を尋ねているのか俺も分からない

「…うん、」

意外にも控えめだ

なんとなく恥ずかしそうに足を動かしている

「お前変わったな」

俺はまた言わなくてもいいようなことを言う

「そうかな?ぅふふ」

でもきもい笑い方は変わってない

これ以上いたらまずい

「じゃ、そろそろ行くわ」

「あ、忘れ物!!」

成長して強くなった手で、ぐいと腕を引かれていた

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