第六話 婚礼祭

「ハープ、ですか?」

『うむ』


 イーストンから領主邸に戻って数日後、ダロワ殿が私の私室でハープを出されました。


『我が黒竜族の秘宝、聖女のハープだ』

「黒竜族の秘宝……」

『そうだ』


「何か曰くがあるのですか?」

『音が出る』


「楽器なのですから当然ではありませんか。からかっておいでですの?」


『いや、弾き手が思い描いた通りの音が出るという意味だ』

「思い描いた通りの? 意味が分かりませんが……」


 詳しく聞いてみますと、楽しい気分の時には楽しい曲が、悲しい気分の時には悲しい曲が、左右の指で弦を弾くだけで奏でられるというのです。


『慈愛の心で弾けば癒しを顕現する』

「それはつまり……?」


『聴いた者の病気や怪我が癒えるということだ』

「凄い! 凄いですわっ!!」


『どうだ、我らの婚礼の余興に相応しかろう?』

「ダロワ殿!」


 私とダロワ殿、そしてスコット兄上さまのノエルの婚礼の儀はつい先日、半年後と定められました。場所はコートワール帝国城で、婚礼祭は式の前後十日間。もちろん、ノース帝国でもお披露目をさせて頂く予定です。


 そうして私は仕事の合間を縫ってハープの練習を始めました。

 指を走らせれば思い通りの曲を奏でられるとはいえ、折角ですから演奏する姿でも魅了したいではありませんか。その思いにダロワ殿も賛同して下さり、金刺繍の入った純白のローブをプレゼントして頂きました。


 これも天女のローブと言われる黒竜族の秘宝だそうです。


 それから半年後、婚礼祭が始まりました。この後は私とスコット兄上さまの婚礼の儀を挟んで、前半は帝都サマルキアを中心に、後半はノース帝国側を中心に婚礼祭が開かれます。


 そこで私とダロワ殿、スコット兄上さまとノエルは街中をお披露目用の馬車で回るのです。そして前後半のそれぞれ最終日に、お城のバルコニーで私はハープを演奏することとなっておりました。




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短くてごめんなさい。

かなりスランプです。

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