儂の打った剣、大人気……
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スキル:ガチャガチャ
使用可能ガチャガチャ
・魔石ガチャガチャ
・毎日一回無料ガチャガチャ
・【期間限定】ピックアップガチャガチャ(魔石)
・【期間限定】ピックアップ無料10連ガチャガチャ(1回限り)
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ステータスをチェックしてみると確かにスキルの所がそんな感じに変化していた。
とりあえず詳細を確認するために期間限定の魔石ガチャガチャを選択してみる。
『【期間限定】ピックアップガチャガチャ(魔石)が選択されました。
……
今回のピックアップは海に関するアイテムの出現率が大幅に上昇します!
さらに!この期間にしか手に入れることの出来ないアイテムが出現し、回せば回すほどそれらが出る確率が高くなる特別仕様!
さらにさらに!この期間限定ガチャガチャを回すとポイントが溜まっていき、期間終了時の総ポイント数によっては何か良いことがあるかも……?
海に関する特別なアイテムとは何なのか?それは自分の目で確かめてみよう!
……
ガチャガチャを出現させます』
そうして目の前に現れたのはいつものガチャガチャ――ではなく見たことないデザインをしていた。
全体的に青色をベースにしていて、そこに海の絵だったり魚の絵だったりが描きこまれている。そして一番目立っているのが正面に描かれている青い髪の女性だった。凄い美人なんだけど、どことなく怜悧な印象を抱かせる女性が泳ぐようにして描かれていてその手が伸びる先にちょうどカプセルの排出口がある。
これまでが無地だとするとかなり凝ったデザインになっている。
ピックアップ限定のガチャガチャはどれもこんなに凝ったデザインになるのか思うと、何だか特別感があっていいかもしれないと思った。
「これがガチャガチャなのか……?」
「そうです。今回出したのは魔石を使用するタイプなので、これに魔石を近づけて上にある宝石の色が真っ赤に染まった数だけ引くことが出来ます」
「ふむ、しかし今は魔石の持ち合わせがなくてのう。誰か魔石を持っている者はおらんか?」
「ああいえ、それに関しては問題無いです。一回限定ですが魔石が無くても使用できるタイプもあるのでそっちを出しますね」
お姉様たちと一緒にアレス様とレイア様にあたしのスキルについての説明とそれを使って今回の事件を解決できるかもしれないという話を伝えた。
最初は信じられない、半信半疑の様子だった二人だけど実際にアイテムを見せた事とアリシアが信用していた事が決め手になって何とか信じてもらえた。
けれど実際にどんなものかを見ない事には何とも言えないとも言われたので、みんなの前で実演することになったのだ。
ここにいるのは、あたしとジュリアお姉様とフローラお姉様とサーラ。そしてアリシアとアレス様とレイア様だ。使用人は人払いをお願いしたし、サーラやアリシアが人の気配がないことを確認しているので間違いない。
今度は期間限定の無料10連ガチャガチャを選択する。
出すときに出てくる説明はさっきとほとんど同じ文で、こっちを引いてもポイントと言うのは溜まるようだった。
まあ今はそこら辺はどうでもよくて、これで引く準備が整った。
ちなみに本体のデザインもさっきのやつと同じだった。
「それじゃあこれを回すんだけど……この中で一番運がよさそうな人って誰?」
突然そんな事を聞かれた為、顔を見合わせている。
もちろんこれにも理由がある。
「ガチャガチャで出てくるアイテムは完全にランダムで運次第なのよ。一応これは10個のアイテムが出てくるんだけど、少しでも運がいい人がやった方がいいと思うの。だから聞いたんだけど、どうかしら?」
「だったらクレハなんじゃないか?お前が一番レア度の高いアイテム引いてるだろう?」
「それは数を回したって事もあるし、それに最近は銀色すら出てないのよね。なんか最初で使い切った感があるし自信がある人がいればそっちの方がいいでしょう……」
7日間あった無料10連と毎日1回無料ガチャガチャのお陰で最初の事は一日に11回も引くことが出来た。しかしレア度の高いアイテムが出たのは最初だけで、後半では銀色以上のカプセルには1つもお目にかかっていない。
こればっかりは運がものを言うからしょうがないと言えど、なかなか厳しい結果だった。
でも面白そうなアイテムはいくつか手に入ったんだけどね。アリシアに渡した布もその一つだ。
「俺はこの間長年使ってた愛用の剣が折れて修理に出したんだ。だから運勝負なら遠慮しておきたい」
「わしもこの前街を歩いてたら財布落としたんじゃ。この頃は豆しか食っとらん。給料日が待ち遠しいのじゃ……」
「私も最近ついてないのよね。この前だってご飯食べにいったら臨時休業してたしね。それに今日だって薬草が見つからなくて街中を歩き回ってたんだもの。遠慮しておくわ」
期待していた3人が早々にリタイアを表明してしまった。それとレイア様には今日はご飯を食べて行ってもらった方がいいかもしれない。なんでいい立場にいる人が飢え死にしそうになっているのか。
大人の世界が世知辛いのだろう。
「というかやっぱりクレハでいいんじゃねえか?だってそれはお前のスキルだろう。だったら持ち主のお前がやった方が一番力を発揮するんじゃないのか」
「そうね~。それにここ最近のガチャガチャの出が悪かったのも運を溜めていたのかもしれないわよ~?」
お姉様たちはあたしが引くことに乗り気な様子だ。
そしてアレス様もレイア様もアリシアもこっちに期待しているような視線を向けてくる。
そんな目で見られても……
「わ、分かりました。あたしが回します。でもいい感じのアイテムが出なくても怒らないでくださいよ!?」
「安心しろって!そん時は適当に魔物狩ってきて魔石ガチャガチャ回しまくればいいんだから!そんな事気にせず思い切って回しちまえ!」
「その時はお願いするわ。それじゃあ回すわよ――」
ガチャガチャの取っ手に手を掛けてゆっくりと回す。
最初に出てきたのは緑色のカプセル。
次は赤色、青色、青色、青色、緑色、銀色、赤色、青色と続いていく。
何とか銀色1つは確保できたけど、できればもう一押し欲しい。
残り一回に全てが掛かっていると言っても過言ではない。
神様……加護があるから知恵の神様がいいかしら?ああでも運が関わってくるなら教会で見た運命の神様がいいかしら。
どうか最後の1つでいい感じのアイテムが出ますように!お願いします!
そうして回した最後の1回。
出てきたのは――虹色のカプセルだった。
「やった!!」
思わず声を上げてしまった。虹色のカプセルはあたしでもまだ2回しか引いた事が無い激レアアイテムカプセルなのだ!これなら精霊様が満足するようなアイテムが入っているはず!
「お、虹色のやつは初めて見たな?これって銀色と比べてどうなんだ?」
「滅茶苦茶レアよ。具体的には金色で出てきたあの杖よりも上のレア度のアイテムが入ってる」
「「「おお!!」」」
お姉様とサーラが揃って歓声を上げる。3人とも以前に引いたアイテム『4元の指揮者』の効果を覚えていたようだ。
「その喜びようはいい結果だったのか?」
「はい。とりあえずこの銀色と虹色のものに期待できるアイテムが入っていると思います」
「おお~そうなのか!こんなスキルは初めて見たが、なかなか面白いスキルじゃのう。して、そのかぷせるの中にアイテムが入っているんじゃな?」
「そうです。いま開けますのでちょっと待ってください」
とりあえず銀と虹の2つを開けてみる事にする。残りに関しては後で確認することにしよう。それよりも今はこっちを確認してみないと。
まず開けたのは銀色のカプセルだ。中に入っていたのは、何だろう。普通の剣にしか見えない。これが本当に銀色なのかと疑問に思いながらもとりあえず説明書きを読んでみる。
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アイテム名:斬魔の剣 レア度:☆☆☆☆☆
遠距離から魔法攻撃が飛んでくる!しかしあなたは盾も無く避けるための時間もない!そんな状況に陥った時も、この剣があれば乗り切れる!なんとこの剣は魔法を切断する事が出来るのです!しかし、ただ魔法を切断するだけではありません。切った魔法を吸収し剣に溜め込んでおく事が出来るのです!
さらにさらにその魔法をそのまま放出することもできますが、魔力に変換する事で切れ味を増す事が出来るのです!さらにこの効果は魔法だけでなく切った相手の魔力を吸収することでも発現します!
斬れば斬るほど強くなる!さあ、その切れ味の到達点には何があるのか?自分で使って確かめてみましょう!
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「なんだ外れか……」
「「「まってまってまって!!?」」」
水に関するアイテムじゃなかったのでさっさと次に行こうとしたらアレス様とジュリアお姉様そしてレイア様にも止められてしまった。
「何ですか?このアイテムは今回の目的には適しませんよ?」
「い、いやそうなんだがね?え、本当にこれが出てきたの?おもちゃにしか見えないサイズなんだが?」
「ああ、これは仮の姿ですね。『実体化』すると――ほらこの通り」
テーブルの上にミニサイズだった剣を置いて実体化する。するとそこには目立った装飾は無いが、刀身から妙な圧力を感じる不思議な剣が現れていた。
確かに魔法を切るとか魔力を吸収とかには興味があるんだけど、今はそれよりも水に関連するアイテムが欲しいのだ。
「なあクレハ!?これ貰ってもいいか!?凄い欲しいんだけど!?」
「まあいいわよ。でも後で調べさせてよね」
「軽い!?軽いぞ!?これそんな簡単なやり取りで渡していいレベルの剣じゃないぞ!?フローラ、お主の妹はどうなっとるんじゃ!?」
「姉思いのいい子です~」
「ジュリア、ここは上司に譲るところじゃないか?何、きちんと対価は支払おう。言い値で構わないぞ」
「総長さっき自分の愛剣を修理に出したって言ったじゃないですか!私はそんなに思い入れるのある武器もありませんし、私が使います!」
「アレはそろそろ寿命だったんだ。折れたのもむしろ今の俺にふさわしい剣を見つけろという剣からのメッセージかもしれん!という訳でその剣が新しい相棒にふさわしいと思うのだよ!」
たった剣一本で争いを始める姉とその上司。こんなつまらないことでも争いが起こるのだ。世界から戦争が無くならない訳である。
そんな気持ちでやり取りを眺めているとアリシアが鋭い視線を混乱した面々に向ける。すると騒いでいたのが嘘かの様に一瞬にして硬直する。多分視線以外にもなにかされたんだと思うけど、落ち着いたんだから良しとしよう。
「その剣に関してはあとでゆっくりと話し合ってください。それよりも次のカプセルを開けるますよ」
「わし、もうあのかぷせるの中身が怖いんじゃけど。今度はあらゆる魔法を操ることが出来る杖とか出てきたしないか……?」
「それなら似たようなのがもう出てますよ~」
「……いまなんて――」
虹色のカプセルを開けようとしてふと気づく。カプセルのてっぺんの部分に青い星マークが入っているのだ。これはピックアップと関係あるのだろうか?
気になりつつも中身を確認してみる。中に入っていたのはコップだった。いや、正確にはお酒とかを飲む杯というやつだ。
全体が金色の金属で作られた杯で、だけど金ではないと思う。金にしては軽すぎるのだ。何か特別な金属が使われているのかもしれない。
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アイテム名:神水溢れる黄金の盃 レア度:☆☆☆☆☆☆☆
これは今回のピックアップ期間に備えて準備しておいたアイテムの一つです。その中でも最高クラスの一品なので、これを引き当てたのであれば自らの運と日頃の行いを誇ってもよいでしょう。このアイテムは実体化すると、放置しておくだけで器の中に水が溜まっていきます。それもただの水ではありません。今となっては地上に存在することのない神水なのです。神水は薬品に使えばその効果を飛躍的にアップさせ、飲むだけで体を癒し、かけるだけで植物を育てる神の使う水です。使い切ると自動で補充されるのであなたの自由に使いなさい。ちなみにこれをもって祈ると私と対話することが出来ますので、その機会を待っています。
P・S
もし神水を常飲するのであれば1日に2L以上は飲まないようにしなさい。それ以上飲むと勝手に進化してしまうので。交信待っています。
by海の神
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「これはヤバい……」
うん、あたしでもこれはちょっと不味いのが分かる。まずこの説明文を書いている人がいつもと絶対に違う。そして最後についている海の神という単語。『P・S』の意味は分からないけど、要するにこれが海の神からのメッセージだという事だろう。
つまり対話って海の神様との対話ってこと?幻覚かもしれないけどそれを待っているとかも書いてあるんだけど?
「「「……」」」
とりあえずこの場の全員が固まってしまっているのであたしも含めて再起動には少し時間がかかりそうだ。
少し時間をおいてみんなが情報を整理(隅の押し込めたともいう)出来たので、会議を再開する。
議題はこのアイテムを本当に精霊様に贈ってもいいのかについて。
「まあ希少さとか価値で言えば問題ないどころか過剰気味ですらあるけど、これ本当にあげちゃって大丈夫かしら?」
アリシアの言う通り条件は間違いなく満たしている。
では何が問題なのかと言うと――
「これ下手に譲ったりしたら海の神様に天罰とか貰うんじゃない。だってこれ明らかに引いた人が使う事を望んでいるわよね?この場合クレハになるんだろうけど、譲っちゃだめじゃない」
「やはりそう思われますか。確かに水の精霊様に贈るものとしてはこれ以上ないものだとは思うのですが……」
「海の神は水も司っておる。つまり水の精霊はその眷属とも言えるわけだから、そんな相手にこれを贈るのはのう……」
神様、確かにあたしいい感じのアイテムが出るようにお願いしました。
でも、これはやりすぎではないでしょうか……?過剰に叶えすぎではないでしょうか?いやもちろん嬉しいです、ありがとうございます。これを使っていろいろ試してみたい事が次から次へと浮かんできてうずうずしています。
やっぱり魔石を集めて別のアイテムが出るまで頑張るべきなんだろうか。
「それなら~、直接聞いてみればいいんじゃないかしら~?」
そんな空気を壊すようにフローラお姉様がいつものおっとり口調でそんな事を言った。
「聞くって誰に……?」
「そんなの海の神様に決まってるじゃない~。その盃をもって祈ればお話する事が出来るんでしょう~?だったら直接聞いてみればいいじゃないの~」
「「「……」」」
盲点だったと言いたげに全員の目が点になる。
確かにそれもそうだ。分からないので心配なら、これをくれた本人である海の神様に直接聞いてみればいい。
ただ問題は誰がそれをするかという事だ。
ひょっとしたらお叱りどころか天罰が下るかもしれないこれを誰がするというのか?
そんな事を考えていると全員の視線があたしに向いている事が分かった。
「あ、あたし……?」
「「「(コクコク)」」」
どうやらあたしがやるしかないようだ。
知恵の神様、もしもの時は仲裁をお願いします。お布施とかもう沢山するのでどうか助けてください。
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