賑やかな一家で楽しそうね!

 第~回カートゥーン家家族会議が開かれてしまった。ちなみに回数の所はお父様のお父様の代辺りから曖昧になっているそうなので、既にあってないようなものになっている。でもカートゥーン家は王国でもそれなりに長く続いている家なので、もう1000回ぐらいは超えてるんじゃないのかな?


「それでこのとんでもアイテム群はクレハの<ガチャガチャ>というスキルから出てきたという事なんだね?」


 現実逃避気味だった思考が現実に戻される。

 いつも家族で食事をとっている食堂には両親と二人の姉、そして執事長とメイド長の6人があたしを囲むように座っている。

 ばれる前に切り上げようと思っていたアイテム検証は、思った以上に面白く。結果、徹夜してしまった挙句にメイドに見つかって家族会議が開かれるに至ったわけだ。


「そうよ、お父様。昨日のパーティーの後部屋に戻ってから色々試していたら出てきたの」


「ふむ……」


 考え込むお父様に、誰も何も言わない。食堂を重い沈黙が支配する。

 

 ああ、だから嫌だったのだ。バレてしまったらこうなるのは分かっていたから。でももう手遅れなのだ――


 お父様は目を伏せ、そしてゆっくりと顔を上げると……


「クレハが徹夜してだぁ“ぁ”ぁ“~娘が、娘が……不良にな”っでしまっだぁ“ぁ”ぁ“~~」


「なんで徹夜しただけで不良になるのよ!?ああ、もう!?だからバレたくなかったのに!?」


 家のお父様はそれはもう大変な子煩悩なのだ。こんな感じであたしが徹夜しただけで、号泣するぐらいには。こんなんでも男爵家を取り仕切り、各地の貴族と色々なやり取りをする歴とした貴族の当主なのだ。


「あ~あ、ついにバレちまったか。ちゃんと上手くやらねぇとダメだろ、クレハ?」


「内緒で魔物狩りしていたことがばれた時のジュリアお姉様ほどじゃないわよ」


「そうよ~ジュリア~。あんたの時に比べればこんなぐらい可愛いものよ~」


「……フローラお姉様もひとの事言えないでしょう。王都の学校で絡んできた男子生徒を全裸で磔にしたこと忘れたわけじゃないでしょ?」


「それは~それ~これは~これよ~」


 これだから脳筋バカと腹黒バカは手に負えないのだ。自分たちのことを棚に上げてあたしのことをからかってくるくるんだから面倒くさすぎる。


「バルドも何時まで泣いてるの!徹夜ぐらい可愛いものじゃない。むしろクレハは真面目過ぎるから少しぐらいグれてちょうどいいぐらいよ!」


 そうやって泣いているお父様を慰めるどころか、𠮟りつけているのが我らが最恐……いや、最強のお母様であるセレナお母様だ。私も含めた娘たち、そして屋敷に働く者の全てが逆らうことの出来ないお人である。

 バルドお父様?そんなにお母様に逆らえるわけないじゃない。論外よ、論外。


「それもそうか。ジュリアとフローラに比べれば夜更かしぐらい可愛いものだな、うん!」


「「何か酷いこと言われた気がする」」


「まったく。それでクレハ、このアイテム類は本当にあなたのスキルから手に入れたものなの?」


「そうよ。あたしだってあんな正体不明のスキルからこんなに凄いアイテムが得られるなんて信じられなかったわよ。お陰で検証に夢中になって気が付いたら朝になってたわ」


「徹夜の件は後でしっかりお話するとして、確かにどれもこれも凄いアイテムね。特にレア度が☆4以上のものなんて、王城の宝物庫に入っていてもおかしくないぐらいよ。しかもそれが無料でもらえるなんて。クレハはこれをどうしたいの?」


「そうね……暫くは調べたいわ。そのほとんどが未知の技術だなんて、興味が尽きないもの!調べ終わった後は、皆の好きにしていいわよ。売るなり、使うなり、譲るなり」


「……こんなアイテム売れるわけないでしょう?なんであなたは頭は良いのに、そう言うところには無頓着なのかしら」


 失礼な!あたしだってしっかり考えてるわ!ただ調べ終わったものに興味がないだけよ!


「まあうちの領内で使うのが一番いいかな。変に目立って面倒な貴族とか、王族に目を付けられてもクレハのためにならないしね。売るとしたら相手をきちんと選ばないとそれこそ危ない。特に『どこでも蛇口』なんて井戸や川に水を汲みにいかなくて良くなるんだから。村の中央にでも設置しようか?」


「そこらへんはご自由にどうぞ。それじゃあ、あたしはアイテムの研究を進めたいから部屋に戻るわね」


「ちょっと待って!」


 話は終わったと思い部屋に戻ろうとすると、セレナお母様に呼び止められる。


「そのガチャガチャって私達でも回せるのかしら?」


「え……やってみないと分からないけど、多分出来ると思うわよ。確かに気になる、ちょっと出してみるわね!」


 あたしもそういえばどうなんだろうと思ったのですぐに試してみることにする。ステータスを開いてから、スキルを起動する。出てきたのは昨日と同じ種類のガチャガチャだった。昨日は回した後に、無料ガチャガチャの二つは消えていたのでまた引けるようになったみたいだ。

 とりあえず毎日一回無料ガチャガチャの本体をテーブルの上に出してみる。すると皆の視線がそっちに向いたので、さすがに見えないという事は無いみたいだ。


「これがガチャガチャなの……?」


「そう。そこについている取っ手を回すと下にある穴から中に入っているカプセルが排出される仕組みよ。中にアイテムと簡易的な説明書が入っているの」


「なるほど、なるほど――」

 

 そう言いながらセレナお母様は取っ手を回し始める。止めるどころか促す間もなく自分でやり始めてしまったよ。 

 なんでこう家の人たちは自由なのか……


「あ、出てきたわね。ええと、青いカプセル?ね。何が入っているのかしら」


「回せたってことは開けることも出来ると思うから、そのまま開けちゃって。それで中に入っている紙の説明書を読んで」


「分かったわ」


 お母様はカプセルを開けて、中に入っている者を取り出す。1つはもちろん説明書の紙、そしてもう一つはポーションなどと同じように瓶に入った液体だった。


「ええと、これは『もちもち美容液』というアイテムみたいね……!?」


――――――――――――――――――――

アイテム名:もちもち美容液 レア度:☆☆☆

最近お肌の張りが無くなってきたり、乾燥によるガサガサ肌になってしまったりというお悩みを速攻解決!これを塗ると荒れた肌を整え、保湿、美白などの作用でお肌をより綺麗にすることが出来ます!天然の成分100%から出来ているので、肌刺激なども気にせずお使いにいただけます!これを使ってもちもちお肌を手に入れましょう!

――――――――――――――――――――


「ねえ、お母さま~それ私に「あげないわよ」くれって否定が早いよ~」


「これは私がガチャガチャを回して出したものよ。誰にも渡さないわ!」


「何だ武器じゃねぇのかよ。そんなん貰って嬉しいのか?」


 あたしもジュリアお姉様と武器の所以外は同意見だけど、もちろんそれは言わないでおく。だってあんなことを言うと――


「ジュリア!あなたはもうちょっと美容にも興味を持ちなさいって言ったでしょう?女の子なんだから気にしなさよ」


 あんな感じにセレナお母様からのお小言を聞くことになるからだ。余計な事は言わない。あたしは学習するんだよ、ジュリアお姉様。


「クレハ、自分関係ありませんみたいな顔しているけど興味が無いのバレバレだからね」


「うっ……そ、そんな事よりもあたし以外でも回せるのね。スキルって基本的には個人の力だって聞いたことがあったからちょっとびっくりしたわ」


「そう言われればそうね。他にガチャガチャの種類は何があるの?」


「無料10連と魔石を使って回すのがあるわ。魔石の方は見てすらいないから、どれぐらい必要なのかも確認していないんだけど。ああ、でも無料10連の方は自分でやりたいから、そっちはダメよ?」


「だったらこの魔石使ってみろよ。帰ってくる途中で倒した魔物のやつだけど、持っていても邪魔なだけだからな。うちの領だとギルドもないから売る場所がねえのが玉に瑕だな」


 ジュリアお姉様がポケットから取り出したのは、拳大のサイズの魔石だった。

 魔石は魔物の体内にある魔力が物質化したもので、魔物を解体することで得ることの出来るものだ。使い道としては主に魔道具の動力として使われてるけど、他にも色々な使い道がある。


「それなら遠慮なく使わせて貰うわ。ありがとうジュリアお姉様」


 魔石を受け取っ手から毎日一回無料ガチャガチャを消して、魔石ガチャガチャを選択する。すると、これまで通り声が聞こえてきた。


『魔石ガチャガチャが選択されました。

……

魔石を使って回すことの出来るのがこの魔石ガチャガチャ!魔石をガチャガチャ本体に近づけるとゲージが溜まっていき、最大になると引くことが出来ます!10本あるゲージが全てチャージされると、10+1連ガチャガチャを回すことが出来ます!

現在は初心者応援キャンペーン期間につき、☆4以上の排出確率が何と2倍に!そしてピックアップとして武器・防具の排出率がさらに2倍になっています!ピックアップ期間中に装備を整えておきましょう!

なお初心者応援キャンペーンはあと6日!

……

ガチャガチャを出現させます』


 そうして現れるガチャガチャの本体はこれまでとちょっとだけ形が違っていた。側面が透明なのと取っ手が付いている所は変わらないけど、上に真っ黒な宝石が浮いているのだ。そう、黒い宝石がガチャガチャの上でぷかぷかとゆっくり回転しながら浮いている。

 ものは試しとジュリアお姉様から貰った魔石を近づけてみる。すると、魔石が粒子状に分解されて吸収されてしまったのだ。そして真っ黒だった宝石が下の方から徐々に赤く染まっていき、全てが赤く染まりきるともう一つ黒い宝石が現れそれも赤く染まっていった。


 それを繰り返していき、最終的には赤く染まりきった宝石が5つと、3分の1ぐらいが赤く染まった宝石が一つで止まった。


「なるほど、この宝石がゲージってことなのね。という事は、真っ赤になった宝石が全部溜まったゲージってことになるから、全部で5回回せる感じかしら」


「なあなあクレハ、どうなんだ!?ガチャガチャ私も回せるのか!?」


「ええ、5回回せるわよ。それにしても、意外と簡単にゲージって溜まるのね。さっきの魔石ってなんの魔物から出てきたものだったの?」


「あぁ?ええ~っと……フローラ、何だっけ?」


「フレイムドラゴンでしょ~?騎士団なんだからそれぐらいちゃんと覚えなさいよ~」


 フローラお姉様の言葉にお茶を飲んでいたセレナお母様とバルドお父様が思わず吹き出す。いや、あたしも飲んでいたら同じことになっていたと思う。


「ふ、フレイムドラゴンって!?A級魔物じゃないの!?そんなヤバい魔物の魔石をポンと出さないでよ!?」


「そんな事言ってもなあ。あんなの火を吐くトカゲだろう?確かにワイバーンよりかは強いけど、大げさじゃねえの?」


「ああ~ちなみにフレイムドラゴンの死体は~放置してきたので~。重くて面倒なので、とりあえず魔石だけ優先させて持ってきました~」


「……ダグラス、後で回収しに行くから手配しておいてくれ」


「畏まりました、旦那様。それでは、少々行ってまいります」


 執事のダグラスが食堂を出ていく。

 ドラゴンの素材といえば、鱗、肉、血液までもが有用な素材になる美味しい魔物なのだ。そんな魔物の素材を丸々捨ててくるなんて、何というかお姉様たちらしいというか、なんというか。どうせなら素材を全部持ってきてくれれば色々実験にも使えたのに。


「と、とにかく被害が出る前に倒してくれて助かったよ。ありがとう、二人とも。怪我は無かったかい?」


「かすり傷一つないぜ!」


 まあ分かっていたことだけど、二人とも怪我は無いようだ。咄嗟のことで心配してしまったが、お姉様たちにとっては心配するほどの事でもなかったと再認識した。


「……それにしてもフレイムドラゴン、ね。ここの地域では見ない魔物だけど、他に生息域の違う魔物は見なかった?」


「う~ん……特にそんな感じはしなかったですね~。フレイムドラゴン以外はいつも通りの森でしたよ」


「そう……まあ念の為に調べておいた方がいいかもしれないわね。バルド」


「セレナの言う通りだね。フレイムドラゴンの素材を取りに行きがてら、様子を見てこようか」


 お姉様2人の発言で話題がかなりずれてしまったが、その話も終わったので話題も自然と元に戻る。


「それで、ガチャガチャは5回回せるんだよな!だったらやらせてもらうぜ!」


「ちょっと待って~!フレイムドラゴンを倒したのは二人で、でしょ~?私にも引く権利があると思うんだけど~?」


 フローラお姉様がずいずいっとジュリアお姉様に迫る。その顔がやたらと笑顔なので、ジュリアお姉様も若干引き気味だ。


「わ、分かったよ。でも5回だから二人で分けて残りの1回はどうするんだ?」


「あ、それなら俺が――「「それはない」」――ぐすん」


 バルドお父様の提案を一蹴して話しあった結果、最後の1回は2人で同時に回すことで落ち着いた。

セレナお母様はさっき出てきた美容液に夢中だし、悲しむバルドお父様を慰めるものは誰もいなかった。

哀れ、お父様。


え、あたし?……ドンマイお父様!


「じゃあ私から回すぞ!そりゃあっ!!」


 ジュリアお姉様が回した結果出てきたのは、赤と銀のカプセルが一つづつ。


「それじゃあ~私も回すわね~!それぇ~!」


 フローラお姉様が回した結果出てきたのは、二つとも赤のカプセルだった。


「「そりゃあ!」」


 そして二人同時に回して出てきたのは、金色のカプセルだった。

 うわ、金色のカプセルが出てきた!?銀色が出てきただけでもアレなのに、金色ってあたしでも一つしか出ていないのに。しかも、その一つから出てきたのがあのスケッチブックだから。かなり凄いアイテムなのが期待できる!


「ええと私のは~っと――」


「素敵なものが入っている気がするわ~――」


 あたし達が見守る中で、お姉様たちがカプセルを開け始める。

 まずはジュリアお姉様のから。

――――――――――――――――――――

アイテム名:力のピアス レア度:☆☆

シンプルなデザインのピアスですが、その効力は本物!これを付けると筋力上昇の効果で、いつもよりも膂力が大きくなります!重い武器を持てるようになったり、一撃の威力が上がったり!これで周りに差をつけろ!

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アイテム名:爆裂ガントレット レア度:☆☆☆☆

拳を主体として戦う方におススメ!殴れば殴るほど威力が上がるガントレットがこちらになります!絶え間なく拳を打ち込むことで、次の拳の威力がなんとなんとの1.5倍に!最大で10発目まで威力上昇の効果があります!11発目以降は10発目の威力が引き継がれます!もちろん耐久性にも問題はありません!高純度のミスリルで作られている上に、自己修復機能が付与されています!これを使って目指せ、爆殺!

――――――――――――――――――――


 やっぱり武器。防具特化だったからなのか、二つとも武器関連のアイテムだった。

 満足のいく結果だったのか、試したくてうずうずしている様子だ。


 でも、先にフローラお姉様のも確認しないとね。 

 じゃあ次も開けていきましょう!

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