第231話 旅立ちの朝

翌朝。

悠月たちは、幸鶴丸の元気な声に起こされた。

「朝ですよー!」

「……ん、もう朝なのか」

悠月は眠い目をこすった。

「おはよう……」

松井もあくびをしながら挨拶をする。


「兄君様たちは、朝が苦手なのですね」

幸鶴丸は笑顔のまま言う。

「なかなか眠れなくてね……」

松井は苦笑いしながら言う。


「朝餉を食べたら、出発するとじじ上様が言っておりましたよ」

幸鶴丸は明るく言う。

「わかった……」

二人はそう言って、もそもそと準備を始める。

「今日の朝餉は何だろう?」

幸鶴丸はそう言って、部屋から出て行った。


「幸鶴丸は……」

松井は着物の裾を引っ張りながら言う。

「朝からでも元気なもんだな……」

悠月は半分感心、半分呆れたように言った。


「それにしても、さすがにこう毎日着物を着てるとさ……、知らぬ間に着付けが上達するモノなんだね……」

「俺は今、洋服の着方を忘れているような気がしてならないんだがな……」

「ないない、さすがにそれはない」

悠月の言葉に、松井は苦笑いする。


「あ、そう言えば今日は袴もいるな……」

「多分、馬のお世話になるからね……、忘れなくて良かった」

二人は着物の上から馬乗り袴を身に着ける。

「よし、支度も良いな。朝飯食いに行くか」

「うん!」

二人は部屋を後にした。


「あ、おはよう」

くるみは笑顔で二人を出迎える。

「おはよう、くるみちゃん」

松井は明るく挨拶をする。

「おはよ」

悠月はややぶっきらぼうに言う。

「ほら、早く座って。冷めちゃうわよ」

「それは困るな、早く座ろう」

今日は大根の味噌汁と焼き魚だった。

「さあ、召し上がれ」

「いただきます」

二人は朝食に口をつける。


「ごちそうさまでした」

先に食事をしていた幸鶴丸は食器を下げて、廊下をパタパタと走って行った。

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