第230話 幸鶴丸からのお誘い
「兄君様~」
「ん? あれは……」
悠月は声に振り返る。
「幸鶴丸、どうしたんだい?」
松井は幸鶴丸に視線を合わせる。
「明日、じじ上様とお出かけするんです! 兄君様たちも一緒にいかがですか?」
「へぇ、俺たちも良いの?」
「どこに行くんだい?」
「隆景叔父上のところです」
悠月は幸鶴丸の表情がわずかにひきつっていることに気付いた。
それもそのはずである。
幸鶴丸は厳しく接する隆景が少し怖いようである。
「隆景のところか……」
「そういえば、僕も隆景のところに戻らないとね」
「松兄様は隆景叔父上のところにおうちがあるんですか?」
「いや、僕は隆景の手伝いをすることが仕事なんだ。だから、隆景のお手伝いの為に帰ろうと思う」
「そうだったのですね」
幸鶴丸は納得したように明るく言う。
「じゃあ、ゆづ兄様は?」
「俺は隆元様のお手伝いだからな……、ここでお世話になってるんだよ」
「じゃあ、私もお世話をしないと」
「はは、そう来たか」
悠月は笑って言う。
まさかそう返してくるとは思わなかったからである。
「けど、隆景のところに行くなら、海を見れるな」
「あそこはいい景色だからね」
「はい! じじ上様も少しだけなら海に寄っても良いとお許しをくださいました」
「それは楽しみだな」
悠月はそう言って、幸鶴丸の頭をぐしゃりと撫でた。
慌てて、幸鶴丸は髪を手櫛で直す。
「でも、隆元様にお許しはもらったのかい?」
「じじ上様がお許しをもらってきたと言っていました」
「そっか……。楽しみだね」
「はい! 叔父上に怒られるのは怖いですけど……」
「隆景は躾に厳しいみたいだからなぁ……」
悠月は同情的に言った。
「明日も朝早くなりそうだな……」
悠月はググッ、と伸びをしながら言う。
「そうだね……」
松井はそう言って苦笑いする。
「けど、幸鶴丸があんなに嬉しそうだからな。寝坊しないようにしないと」
「そうだね」
二人はそう言って、苦笑いした。
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