第227話 隆元の苦悩
元就の言葉を受け、隆元はいかに父に頼っていたか……。
そう考えていた。
幸鶴丸に対しても、将来的には自分もこういう偉大な父にならねばならないな、そう思ってしまうと、やはり重圧感が凄まじく感じる。
「隆元、お主は確かに幸鶴丸の父じゃ。それはまごうことなき事実。じゃが、お主にはお主にしかできぬことがあるし、ワシでもお主より劣る物は多くある」
「それは幻影ではないですか、父上。父上より私が勝るもの等ございません……」
「いや、あるぞ。ただ、何かは自分で考えてみよ」
元就はあえて、何が自分より勝っているか、それは教えなかった。
「では、父上。失礼いたしまする」
隆元は元就の部屋から出た。
「父上―!」
待ち構えていた幸鶴丸は約束通り、と言わんばかりに話をせがもうとする。
「これ、幸鶴丸」
そんな幸鶴丸を止めたのは、母である尾崎局。
「父上はお疲れなのですよ。後になさい」
「そうなのですか?」
幸鶴丸はキョトンとした顔で聞く。
「そうじゃのう……、遠くから帰って来たからのう」
隆元はそう言ってどうしようか悩む。
そして、ふと閃いた。
「あちらの兄君たちが、話をしてくれるそうじゃ」
隆元はそう言ってにやりと笑っている。
「え?」
「俺たち!?」
「そうなのですか? いっぱいお話聞かせてくだされ!」
幸鶴丸は悠月と松井に向かって無邪気にはしゃぐ。
「あなた……」
隆元はあきれ顔をする尾崎局に幸鶴丸同様の無邪気な笑顔を見せる。
「あ奴らの方が、ワシよりもいい話をしてくれるじゃろう」
「もう、彼らもきっとお疲れのはずですよ」
「なに、ワシよりも若い。回復も早いじゃろう」
「そうかしら?」
尾崎局は幸鶴丸のおねだりに困っている松井を見る。
「彼はお顔の色がすぐれないようですよ」
「船酔いの影響じゃと思うがの」
「でしたら、休ませて差し上げればよろしいですのに」
尾崎局は松井に同情的に言った。
一方で、悠月は幸鶴丸の笑顔に添うよう、とりあえず当たり障りのない話を始めていた。
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