第226話 報告談話

「父上、お帰りなさーい!」

「ただいま、幸鶴丸。しかし、走っては危ないだろう?」

ようやく、隆元は苦笑いしながら幸鶴丸に注意をする。

「早く父上に会いたかったから……」

しゅん、として言う幸鶴丸に、隆元は嬉しい気持ちが勝る。

「そうじゃったか、それはありがとうのう」

「後でいっぱいお話してください!」

「おお、後でな」

隆元はそう言って、元就の元へ急ぐ。


「父上、隆元です」

「おお、隆元。入れ」

「失礼いたします」

隆元は部屋に入る。

「して、首尾はどうじゃ?」

「ええ、二者の同盟を得ました」

「そうか……」

元就はその答えに満足した様である。


「とりあえず、隆元。長旅ご苦労であった」

「いえ、これも全て父上の為です」

「じゃが、忘れるでないぞ」

「はあ……?」

「お主が毛利家の現当主であるということは変わらぬ。それに、ワシ亡き後は誰も後見してはくれぬ。自分でどうにかせねばならぬ時も出てまいる、いな、ほとんど自分が率先してどうにかしていかねばならぬぞ」

「そ、それは……そうでございますが……」

隆元は元就の言葉を重く受け止める。


「しかし、父上」

「なんじゃ?」

「私にはまだ見えぬのです、父上のおらぬ未来が」

元就は思わぬ言葉につい吹き出す。

そして、思いっきり笑った。


「ワシにも未来など分からぬ。じゃから、それは当たり前の事じゃ」

隆元は思わず一緒になって笑った。

「そうでございますな」

「ワシも謀り神などと言われるようになったから、知っとると思うたか?」

隆元はその言葉に面食らう。

「い、いえ……」

「そうじゃ、ワシはいくら戦国の世の謀り神と言われようが、しょせんはただの人間じゃ。道を誤ることもある。ましてや未来などわからん。なるようにしかならぬことだってあるもんじゃ」

元就は、隆元を勇気づけるように言った。

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