第225話 父子再会
「遅いのう……、隆元は……」
「もうすぐ戻ってこられると思いますよ」
元就へとお茶を淹れていたくるみは苦笑いして言う。
数日間、同じことをずっと言うのである。
最初は同情し、なるべく心配させまいと笑顔でいたが、あまりにも毎日のように言うのだから苦笑いしたくもなる物だ。
「とりあえず、お茶でもいただいて少し落ち着きましょう?」
「そうじゃな。ありがとう、くるみ殿」
「いいえ」
くるみは笑顔で言う。
「元就様―!」
兵がバタバタと走ってやってくる。
「何事じゃ?」
「隆元様たちが……! 隆元様たちが、戻ってお見えです!」
「そうか……!」
元就はその言葉にホッとした。
そう、隆元たちは……。
すぐそばまで帰ってきたのである。
「じじ上様」
「おお、幸鶴丸か」
「父上は?」
「もうそろそろ帰ってくるからのう」
「はい!」
幸鶴丸も、嬉しそうににっこりと笑顔になる。
幸鶴丸は、久しぶりの父との対面が嬉しい反面、少し緊張していた。
何を話してみよう?
父にどんな話をせがもう……?
そんな思いを持っていた。
「あ! 隆元様です!」
見張りの兵の言葉に、幸鶴丸はバタバタといの一番に走り出す。
「わ、若様! 走られては……」
兵たちは心配そうに見守る。
「父上―!」
幸鶴丸は隆元に勢いよく飛び込む。
「おお、幸鶴丸! 少し見ぬ間にまた大きくなったのう」
隆元はやんちゃぶりを叱ることを忘れて、再会を喜ぶ。
我が子の成長に、笑顔があふれていた。
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