第224話 朝日の海

光に照らされる感覚に、悠月はゆっくりと目を開けた。

「……朝……か」

「う……ん……、眩しい……」

隣で松井もゆっくりと目を開ける。

「おはよう……」

「悠月、おはよ……」

二人は伸びをし、あくびをしながら朝のあいさつをする。


「お、海もきれいだな!」

「本当だ……、キラキラして……、グラグラする……」

「お、おい、覗き込み過ぎたら落ちるって!」

悠月は慌てて松井を支える。

「朝から元気じゃのう」

隆元は笑いながら様子を見ていた。


「待たせたな! もうしばらくで着くぜ!」

船頭は明るい声で言う。

「もうすぐ船着き場に着くんだね……」

松井は少しほっとしたように言う。

だが、やはりまだまだ顔色は良くないのだが。


「もうすぐだとよ……」

「うう……、早く着かねえかな……」

船酔いしていた兵士たちは呻くように言う。

「けど、まだこの潮風を浴びてるってのも悪くねえんだけどな」

「ああ、いい風だ」

元気な兵たちは対照的に、名残惜しそうに言う。

「なら、また旅に出る時はいつでも声をかけに来てくれよ」

船頭は笑いながら言うのであった。


午前中のうちに、一行は船から下船した。

「なんかグラグラする……」

松井は困り顔で言う。

「ずっと船で揺られていたからな」

悠月は平然としつつ、松井の傍でぼそりという。

「三半規管がやられてるのかな?」

松井はそう言って、困り顔をする。

「そうだと思う」

「落ち着くまで時間かかるかな……」

松井はそう言って肩をすくめた。


他の兵たちも同じ不調を訴えていた。

「歩く速度をゆっくりにしてはいかがだろうか……?」

隆元は家臣たちの不調に、どう対処すべきか悩んだ結果、行軍速度を落とすこととした。

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