第218話 出迎え
朝になり、ようやく船は門司に着く。
「お! 着いたな!」
「お疲れさん、兄さんたち」
「そっちもお疲れ様」
「また縁があれば、頼ってくれ」
「ああ、ありがとう。おい、松井、大丈夫が……?」
「う、うん……」
「そっちの兄さん、落ち着いて降りてくれよ」
松井はよろよろと、そして慎重に足を踏み出す。
「ありがとう、助かったよ……」
松井はまだかすかに青白い顔で言う。
「こっちも乗ってくれて嬉しかったぜ。じゃあ、またな!」
彼は船を漕ぎ出した。
その様子を二人はしばらく見送った。
「ふわぁ……」
悠月はつい大あくびする。
「眠いの?」
「昨日、星空に興奮しちゃってさ……、全然寝れなかった」
悠月は笑いながら白状した。
「あれは凄かったね! プラネタリウムの特等席に座った気分だったよ」
「同感だ」
二人の表情には、ようやく明るさが戻って来た。
悠月はそっと周りを見渡す。
「さてと、隆元様と合流しなきゃいけないが……」
「誰か迎えに来てる?」
松井はからかうように言う。
「そうそう。馬に……ってどうやって連絡するんだよ!」
悠月はついノリツッコミをしてしまっていた。
「それにしても、本当……、移動してたら俺たちも合流できないぞ……」
「参ったね……」
ガサッ、と草をかき分ける音がする。
悠月はハッとして、松井を庇うように前に出る。
まだ、船酔いした余韻で松井がロクに動ける状態でないからだ。
「お、お主らか……」
「びっくりした……、熊でも出たかと……」
「誰が熊じゃ!」
それは、隆元の配下であり、以前から悠月たちをよくからかっては遊んでいる大柄の兵士であった。
「隆元様に命じられて、偵察に来ておったのだ。もしかしたら、そろそろ戻ってくるころだろうから、とな。」
「そうだったんですね……」
「さてと、これより先の道案内はワシに任せよ」
「お願いします!」
三人は隆元の元へと足を進め始めた。
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