第217話 空模様
穏やかな海を、ゆったりと航行していく。
悠月は船のへりに寄りかかって、のんびりと空を見ていた。
「こうもゆっくり空を眺めるのもいつぶりだろうな……」
「今日は穏やかな天気だ、こういう時はあまり大事故がないからありがたいねえ」
誠吉の弟はゆったりとした口調で言う。
「やっぱりそうか」
悠月も穏やかに言う。
「夜空、キレイだろうな……」
悠月が言うと、松井は青白い顔で見つめる。
見つめる、というよりかは睨むに近いが。
誠吉の弟はその様子を見て大笑いだった。
「船酔いの兄さん、上を見られるかい?」
「ああ……、何とか……」
「良い空だろう?」
「青い……」
松井はそれを言うだけであった。
夜は、満天の星空だった。
「はぁー……、これはまた凄いな……」
悠月は感嘆とした声で言う。
「凄いだろう? この景色を見られたのは、嬉しいもんだ」
「俺たちの地元の空と、全然違う……」
「空は同じだろう? 面白いことを言うね」
「ハハ、それもそうだな」
悠月はそう言ってごまかした。
現代の都会の夜空と、現代の田舎の夜空は全く違う。
だが、やはり空気の澄んでいる戦国時代の星空は、まるでプラネタリウムだった。
紺碧の空に、無数の星が立ち並ぶ。
眠っていた松井も、悠月と誠吉の弟の声に目を覚ます。
「見てみろよ、空!」
「す……、凄い……! なんだこれ!」
「満天の星空だな!」
「それに、海も……!」
「海? あ!」
悠月は松井に指摘されて水面を見る。
そこにあった海は……!
星空をそのまま鏡のように映していた。
「凄い!」
松井は目を輝かせていた。
「ああ……、本当にな……」
「兄さんたちが喜んでくれて、俺も船を出してよかったって心底思うよ」
誠吉の弟は穏やかに、そして笑顔で言った。
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