第207話 期限

思わぬ形で、タイムリミットが発生してしまった……。

隆景は、どうやって和解させるべきか悩む。

悠月の言い分、松井の言い分、両方がある。


「松兄様……」

松井は大荷物を抱えてきた。

「行こう、隆景。僕たちだって、ケンカしたままいたいわけではないんだ。もちろん、和解して、一緒に戻ってきたい、って思っているよ」

「はい! 付き合います!」

松井は頷いて、隆景と共に村へと歩き始めた。


悠月は、吉田郡山城で元就が探しているなど考えず、とにかく村の中を歩いていた。

誠吉の足跡をたどって、彼を殺害した人物を探す為である。


「俺の持ってた手紙を狙った犯行だというのなら、手紙を持っていると知っている人物が怪しくはなるけど……」

「知っとる奴はおるんか?」

元春はつい口を出す。

「知っていたのは、当事者である俺と、一緒にいた松井くらいですよ。あとは、隆元様と同盟を結んだ秋月氏とその配下くらいかと……」

「秋月氏か……」


悠月は、何となくだが思いつく。

「もしかして、潜入されていたとか……」

「誰にじゃ?」

「秋月氏の配下の中に、尼子氏の配下や大友氏の配下がいたのかもしれない!」

「潜伏……、まあ、そういう策もあるからのう……」

元春も否定しない。

「じゃが、内応策は戦場なら確かに分かるが、普段から潜伏させておくというのもなかなか難しいかもしれんな」

「いや、狙っている人物の行動を把握したら、暗殺とかしやすくなると思いますよ」


悠月の指摘に、元春は一瞬戸惑った。

だが、よく考えてみたらそれもそうだ、と考え直した。

「お主、よく気が付いたのう!」

「潜入しているかも、それをどうして一番に気が付かなかったんだろう!」

「して、悠月殿。めぼしい人物はおるんか?」

「一応、数人……」

悠月はさすがに誰かに聞かれてはまずいと思い、声を潜めた。

元春もそれに倣うことにした。


「まず、松井と隆景はあり得ないから除外するけど、俺の知りうる限りの経緯を話していきます」

「おう、頼む。けど、それは宿を取ってからじゃ」

さすがに村の道端でこそこそ話す男二人は怪しすぎる。

悠月もさすがに頷いた。

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