第203話 不穏な悠月

元就は、今か今かと隆元の手紙を待っていた。

隆元の手紙の有無、そして内容によって、起こすべき行動が変わるからである。


もし、九州で誰とも手を結ぶことができないのなら、またやり方を考え直す必要も出てくる。

手を結ぶことができるなら、派遣できる兵力を考慮して少しずつ送り込むなりして、九州への侵攻を始めて行かねばならない、と元就は考えていたのである。


「父上―!」

「おお、隆景! どうした?」

「ゆづ兄様と松兄様が戻ってきました!」

「おお! ならば、通してくれるかの?」

「わかりました」


隆景の先導で、悠月と松井は手紙を持って入ってくる。

「失礼します」

「隆元の手紙か?」

「はい……」


元就は手紙を受け取りつつ、悠月と松井の様子に気付いた。

「浮かぬ顔じゃな。何かあったのか?」

「いえ……」

悠月は短くそう答えるだけだった。


元就は怪訝そうに思いつつも、手紙を開いた。

「なるほど……、隆元は首尾よく同盟を結ぶことに成功した様じゃな。やはり、あやつは外交、政治手腕は問題ないのう」

元就はついでに雑談を、と考えていた。


「少し用がありますので、失礼します」

「あ、ちょっと悠月!」

悠月は早々に席を外し、松井も大慌てで追いかける。


「隆景、いったい何があったんじゃ?」

「……兄様たちの、問題です。私も関わるな、と言われておりますから……。こういう時、どうすればいいのでしょうか……?」

「……ふむ。それならば、話ができる時まで待つしかあるまい。それに、領土内の事であれば、おのずと耳にはいってくるからの」

「そう……、そうですね」

隆景はそう言って、頷いた。


「しかし、根を詰めすぎねば良いがの……。それに、返答もあやつらに持って行ってもらいたいと考えておる」

「兄様たちでなければいけませんか?」

「隆元の居所は、あやつらの方がわかるじゃろう」

「それはそうですが……」

隆景は少し不安そうに言った。

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