第183話 返答の手紙

「宗像殿からの返答をなぜお主が……?」

「たまたま立ち寄った、立派な神社で預かってきました」

悠月は得意げに隆元へ手紙を渡す。

「一文字三ツ星の旗印を見て、手紙を渡してきたんですよ」

松井も笑顔で言う。

「なるほど……、我らの旗印が目印となったというわけか……」

隆元はその事実に感心する。


「たまたま、僧の方で誰が隆元様へ届けに行くか、って相談をしていたところだったみたいでして」

「そこに俺たちが毛利の旗印を持って通りがかったから、手紙を渡してほしいって預ける、理に適ってません?」

「確かにそうじゃ。さて、ワシは手紙を呼んでおく必要があるのう」

隆元は手紙を開く。


「……おお、面談してくださるのか!」

隆元はそう言って、安堵する。

もし、ここで宗像氏が面談を断る、という話であれば、九州まで来て調略もできず撤退するという形になりかねなかったからだ。


「隆元様、安堵にはまだちょっと早いんじゃないですかね?」

悠月は思ったことをはっきりと言ってしまった。

「ちょ、ちょっと悠月! それは……」

松井は少し慌て顔で悠月を窘める。

「いや、それもそうじゃな」

隆元は苦笑いした。


「ワシが安堵して良いのは、ちゃんと調略が成功してからじゃ」

隆元は不安をかき消すように強い声で言った。

「じゃないと、九州まで来た意味ないですもんね。松井の船酔いも」

「それ、関係ないだろ!」

松井は軽口をたたく悠月を小突いた。


「お主ら、ちょっと楽しんでおらんか?」

隆元は少し苦笑いしながら突っ込む。

「まあ、こんな軽口で気楽に挑めるようになるなら、お安い御用ですよ」

「気を張りすぎるのも、当然良くないですしね」

「それもそうじゃな。少し、緊張がほぐれたわい」

隆元は悠月と松井の頭をぐしゃ、と乱暴に撫でた。


「隆元様、いってらっしゃい!」

悠月は髪を手で直しながら、隆元へ思い切って言葉を投げた。

「行って参る!」

隆元は兵を数人付き添わせて、宗像大社へと移動を始めた。

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