第182話 託した手紙
宗像大社に兵たちは辿り着いた。
「壮観な場所だなぁ……」
手紙を持っている兵は感心したように言う。
「見とれている場合ではないぞ、貴君! 隆元様のご命令を果たさねば」
「そうであったな」
僧侶たちが大社の中を掃除をしていた。
「失礼仕る……」
「いかがなさいましたか?」
僧侶の一人は話しかけてきた兵に応える。
「宗像様にお目通し願いたい」
「左様にございますか……。申し訳ございません、今朝方出て行かれまして……。恐らく、夕方には戻ると思うのですが……」
「夕方……でございますか」
兵も僧侶も困ってしまった。
「よろしければ、御用をお伺いいたしますが?」
「ええ、では。我が主君である、毛利隆元より手紙を預かっておりまして」
「でしたら、手紙をお預かりしましょう。宗像には必ずお渡しいたします」
「では、宜しくお願い申し上げます」
兵は僧侶に手紙を託した。
隆元は、宗像が留守にすることも想定してはいた。
「宗像殿は大宮司であるが、大名でもある。恐らく、忙しくされていることじゃろう」
「隆元様、使いの者が戻って参りました」
「うむ、報告を聞こう。こちらに通してほしい」
「はっ!」
兵たちは隆元に呼ばれた。
「隆元様、報告申し上げます」
「宗像殿は我らが到着するより前に留守にされており申した……。僧侶の者に、手紙を託しております」
「お主たち、ご苦労であった。留守にしておるのは想定しておった。大名でもある方ともなれば、あちらこちらと忙しいのは、ワシも理解がある」
そう、それこそ元就が忙しくあちらこちらと動き回っている背を見ていたからである。
「返答の使いはこちらから、と思ってはおるのだが……。いかんせん、いつ返事を書かれるかはわからぬ。ゆえに、こちらの滞在している間、どの辺りにいるという情報はこちらから書いておいた。あちらから返事を持ってくる可能性はあるじゃろう」
「さすがですな」
兵たちは隆元の行動に感心していた。
翌日、隆元は思わぬ人物と出会った。
「お主は……!」
「隆元様、お待たせしました」
悠月たちがようやく追いついてきた。
そして、悠月の手には、何やら手紙のようなものがある。
「宗像って人からですよ」
悠月は得意げに隆元へ手紙を渡した。
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