第181話 宗像氏

隆元は、まず筑前の武家でもある宗像むなかた氏に目を付けた。

宗像氏は、以前大内家にも仕えていたはずである。


宗像氏は宗像神社の大宮司であり、日本各地に七千余ある宗像神社、厳島神社、および宗像三女神を祀る神社の総本社としている。

『日本書紀』では、一書に曰くとして「道主貴」と称される。

玄界灘に浮かぶ沖ノ島を神域としている。


「大宮司の家じゃったか……、ふむ……」

隆元はどう交渉するか、と悩み始める。


そもそも、宮司の家系なら戦に巻き込んでしまっていいのか……。

隆元はそこにも思い悩むことになる。

なぜなら、宮司を味方に引き入れたことで、神社にも影響が起きる可能性をどうしても考慮する必要があるからだ。

それには、元就が信仰深い一面を理解しての考慮である。


隆元は、悩みに悩みつつ、宗像氏に面会の手紙を送ることにした。

まずは会い、話をし、それからどうすべきかを見極めればいい、と結論付けたのである。

手紙は、可能な限り丁寧に書いた。


気付けば、空は明るい。

「……うむ、もうこんな時間か」

「隆元様、おはようございます」

赤川が元気よく挨拶に来る。

「ああ、おはよう」

隆元は軽く伸びをした。


「おや? その手紙は……」

「ここでの有権者である、宗像氏に送る手紙じゃ」

「宗像殿に……?」

「そうじゃ。これは誰に託すべきかのう……?」

「兵でもよろしいのではないでしょうか?」

「それもそうかのう……」


隆元は、兵に手紙を託すことにした。

彼らであれば、いつも使者の役をすることもある。


「では、この手紙を宗像殿に渡すように」

「はっ! かしこまりました」

手紙を持った兵は、警護を兼ねて同行する兵と旅立っていく。


「この交渉、失敗すれば九州進出の足がかりが消えることにもなりかねんのう……」

隆元は、いきなり重圧感を覚えて不安になってきていた。

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