第179話 明るい道中

「門司から、筑前、豊前ですか……」

松井はまだほんのりと青白い顔で言う。

「すぐに行けるともちろん最良じゃが、お主の顔色を見る限り、別動隊として後から着てもらう方が良さそうじゃな……」

隆元は困り顔で言う。


「そもそも、移動距離も結構なものでしょう!?」

悠月は思わず言う。

「仕方なかろう。というか、お主ら……、安芸の吉田郡山城から長門国やら石見銀山やら往復したじゃろ? 今更じゃ」

隆元は意にも介さない。


改めて考えてみると、確かにそうだ。

というより、馬と徒歩を組み合わせたとはいえ、毎度よくそこまで移動していたのを改めて知ると、自分はどんな体力をしているのか、と思って、悠月はつい笑ってしまった。


「さてと、まずは筑前の国人衆を説得に参ろう」

隆元はそう言って隊を二つに分けることにした。


悠月は松井と後から付いていくことにした。

「長距離歩くから、松井も今日はゆっくり休んでおけよ」

「あ、ああ……、ありがとう……」

松井は苦笑いしながら目を閉じた。


翌朝、二人と兵たちは隆元の残していった手紙を手がかかりに、後を追いかける。

「まずは筑前、とはいえさ……」

「遠いね……。馬で良かったよ……。僕たちは」

兵たちはその言葉に苦笑いするしかない。


「われらも、これがいつの間にか当たり前になっておりますからな」

「乗り物なぞあれば、確かに楽にはなりましょうな」

「その点、海を進むときはある意味楽ではありますしな」

「海を進む……」

松井は苦い顔をする。


「僕は船だけはなぁ……」

「思いっきり船酔いしまくるもんな」

「悠月……、叩くよ!」

「おっといけね!」

二人のやり取りに、幾分か兵たちも気が和んだ。

兵たちの笑い声に、二人はニッと笑いあった。


「さあ、気を引き締めていきますか!」

悠月が言うと、兵たちも一斉に声を上げた。

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