第151話 幸鶴丸の一人遊び

元春は先に吉田郡山城へ向かった。

三人は散歩を続ける。

「幸鶴丸がね、最近ポテポテって歩いてると思ったらバタバタ走る出すの、見ててなんか面白いなって思うんだよな」

松井は明るい話題を出そうと話を振る。

「あ、それ分かるなぁ! あと、よく隆元様にべったりくっついてるのをよく見るわ」

「戦、戦で全然親子らしい時間が取れてない、って隆元様も嘆いていたからなぁ……」

くるみも悠月もその話に乗った。

それだけ、癒されていたんだな、と改めて実感する。


くるみはすっかり幸鶴丸とも仲良しである。

悠月は隆元と戦に同行していることが多いから、くるみほど親しくはない。

さらに、松井は隆景の付き添いとして小早川家にいることの方が圧倒的に多いから、幸鶴丸には警戒されている。

隆元も、幸鶴丸が人見知りしているようだ、と言われてしまう始末である。


「でも、僕も幸鶴丸とも仲良くなりたいよ……」

「それはまあ、ゆっくり時間をかけるほかないんじゃないか……?」

少し落ち込み気味の松井に対して、悠月は少し考えてから言った。


一方で吉田郡山城。

元春は元就の元へと歩いていた。

背後から、ぽてんぽてんと音がする。

「ん? なんじゃ?」

元春が振り返ってみると、そこには……。

「見つかったー!」

パタパタ、と走って去っていく幸鶴丸がいた。

「……? 何しとったんじゃ?」

元春は困惑顔で幸鶴丸の後ろ姿を見送った。


「ちちうえー!」

「おお、幸鶴丸、どうしたんじゃ?」

「おじうえ来たよ」

「ほう、どの叔父上だろうのう?」

隆元は幸鶴丸を抱っこして歩いていく。

「おう、来たか」

「兄上、さっきは何だったんじゃ?」

「偵察ごっこ、らしい。最近幸鶴丸お気に入りの遊びじゃ」

「なんじゃそりゃ」

隆元と元春は顔を見合わせて笑った。


「何で笑うの?」

「おもしろいからじゃ」

隆元は笑顔で幸鶴丸に答えた。


「ところで、兄上。父上が急に呼びつけてきたんじゃ。どうしたんじゃ?」

「ワシも詳しくは聞いとらん。隆景が来てから話す、とは言っておったんじゃが……」

「まだ来とらんみたいじゃの……?」

「ああ、まだ来てない」

「どうしたもんか……」

二人は隆景を待つことにした。

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