第149話 気分転換の散歩

松井は元就へと直談判に向かった。

だが、元就もやはり難しい顔をする。

「ふむ……、確かにお主の言いたいことは分かる。じゃが、尼子はそこに対してもしっかり警戒は怠っておらん。つまり、隙がない可能性が極めて高く、こちらが消耗するだけじゃ」

「……打つ手なし、というやつですか?」

「今は待つべき時なのかもしれぬ」

元就は冷静だった。


「どうだった?」

「今は待つべき時なのかもしれん、だってさ」

「だから言っただろ? でも、その動こうって気持ちは見ていて気持ちいいよ」

悠月は何とか松井を励まそうとフォローを入れる。

実際、動きを止めない姿には感心する。

たまに松井が羨ましくさえ思う。


「なあ松井、たまにはゆっくり散歩でもしようぜ」

悠月はそう言って散歩に誘う。

「うん、それはいい気分転換になるかもしれないな」

松井は悠月の誘いに乗る。

「くるみちゃんも声かけてみようか?」

「そうだな。たまにはいい息抜きになりそうだし」

悠月と松井はくるみを探して城内をうろつく。


「くるみちゃん」

「あら、松井さん。どうしたの?」

「良かったら、僕たちと散歩に行かないかい? 気分転換にね」

「良いわよ」

くるみはすんなりと承諾した。


松井とくるみは悠月と合流する。

「にー様たち、おでかけ?」

「散歩に行くんだ。幸鶴丸はお父様にお許しをもらわないといけないぞ」

「幸鶴丸も散歩行くー!」

その声に、隆元はヒョイ、と幸鶴丸を抱っこする。

「まだお主には早いぞ」

「父上―、幸鶴丸もお散歩に行きたいのです!」

「幸鶴丸には、城内だけでもいい散歩になるぞ」

隆元はそう言って笑う。

ぷぅー、と幸鶴丸は頬を膨らませた。


むくれる幸鶴丸と、抱っこする隆元に見送られて三人は散歩に出かける。


「……見送ってもらったのは嬉しいんだけどさ」

「あと少しの事、なのよね……」

「え? な、なにが!?」

松井は驚いたように言う。

「隆元様はさ、幸鶴丸が元服前に死ぬんだよ。史実ではな」

「え……?」

松井はその言葉に動揺を隠せない。

「隆元様には言うなよ。歴史が変わるのは俺も嫌だ」

「う、うん、もちろんだよ」

松井は暗い声をしつつも承諾した。


「……やはり、か」

物陰で小さく暗い声がした。

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