第148話 城主の気遣い

数日かけて、吉田郡山城へと辿り着く。

元就は一時的とはいえ、民たちを泊めるべく本丸御殿を開放させた。

「住まいが見つかるまで、ここで寝泊まりするがよい」

「ありがとうございます!」

民たちは元就の気遣いに心底喜んだ。


元就や隆元はその様子を見て、安堵する。

いきなり住処をなくし、さらにその城主を亡くしたのだ。

不安でたまらないはずだ、と思っていたからである。


「銀山の件はどう動くべきか……」

元就たちの目標は銀山の奪取である。

尼子が占拠した以上、元就たちが銀山を手に入れたいというのはイコール戦である。

だが、隆元には懸念していることがある。

それは、民を巻き込むことだ。


今までの戦でも、民を巻き込んでしまったり、亡くしたりしてきた。

今更、と思ったりはするが。


「ふむ、どうしたものだろうか……」

「お困りですか?」

わざと見計らって話しかけたのは、悠月と松井だ。


「お主たち……!」

「恐らく、民を巻き込まず、なおかつ戦に勝つ方法が分からない、という感じですかね?」

「むぅ……、見抜かれておったか」

隆元は少し悔しそうに言った。

「そりゃ、何となくはわかりますよ」

「隆元様は優しいから……、そうだろう?悠月」

「ああ」

悠月は松井の言葉に頷いた。


「それに、後は銀山の奪取でしょう?」

「確か、収入増にはあの銀山が欠かせないんですよね」

「それに、尼子に比べて毛利家は対応的に鉱夫の買収は不可能ではない。でも、肝心の山吹城を抑えることができていないというのが現状なわけですし」

「お主ら……」

隆元は苦笑いで二人の言う事を聞く。

だが、実際はそれが事実である。


「じゃが、その通りじゃ」

隆元はすんなりと認めた。

「山吹城を開城させるには、どうするべきか……」

隆元はそう考えこんだ。


松井は閃いたように言う。

「なら、今度はこちらが尼子の補給路を断ってやりましょうよ!」

「難しいと思うけどな」

悠月は松井の言葉を苦々しい顔で否定した。

「でも、やってみたらいいとは思う」

「……まあ、それはそうだろうな」

悠月は困り顔で同意した。

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