第139話 忍原崩れ
隆家は、尼子来襲の知らせを受け取る。
「医者の元へ向かった者はそのまま手伝ってくれ!」
隆家はそう命令を下した。
鉱夫たちの命を優先したのである。
「待たせたのう」
隆家は声に振り返る。
そこには、毛利元就が率いる毛利軍がいた。
隆元、元春の姿もある。
「隆家、お主には山吹城の救援に向かって欲しい。じゃが、必ず生きて戻られよ」
「かしこまりました、大殿!」
「して、お主の兵はどれほどおる?」
「10名ほど離脱をしております。ゆえに、6990人、と言ったところでしょうか」
「なぜ10名も……?」
「放すと長くなりますので、手短に」
隆家は理由を手短に伝えた。
「そういうことなら仕方あるまいのう。おぬしの判断、ワシは支持しよう」
元就は穏やかに言った。
「恐れ入ります、大殿」
「人の命は一つしかない、正しい判断じゃとワシは思ったからの」
元就はそう言って隆家を褒めた。
尼子勢は、山吹城へと向かおうとしていた。
尼子軍の本城常光は手始めとして山吹城へ兵糧道を封鎖し商人達にも山吹城への商品輸送を禁じた。
その後、晴久本隊と合流し山吹城を包囲した。
元就は山吹救援の為、隆家を援軍として出撃させたのである。
これに気づいた晴久は忍原に出陣した。
忍原にて宍戸軍・尼子軍の激戦地とされる「一の渡」「二の渡」は山間の谷川が流れる狭隘な地形で、数で劣る宍戸軍が陣取るには当然の箇所であると思われた。
さらに亀谷城と尼子軍を分断する地点でもあり、ただ1つの点を除けば理想的な場所であった。
山の上から攻撃される恐れ、という1つの点が大きな懸念だったが、恐らくそれはないだろう、と隆家も思っていた。
尼子軍は隆家の陣を調べ、急峻な山に登って石を落し、宍戸軍を両側から挟撃した。
宍戸軍としては予測していない方面からの攻撃であり、さらに亀谷城の城兵と呼応した攻撃を受けた。
「くっ……、逃げ場が……!」
宍戸軍は逃げ場を失った。
自壊し、統制が取れないなかで数百人が命を落とした。
生き残った兵たちは、散り散りになりながらも戦場を離脱した。
隆家たち宍戸軍は敗走し始めた。
元就の命令である、『生きて戻れ』という言葉が、隆家を敗走へと導いた。
「自害する必要はない」
隆家はそうつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます