第140話 隆家の帰還

隆家や敗走時に同行していた兵たちや家臣たちは元就の元へと戻っていく。

途中で、散り散りになった兵の一部も合流し、ともに向かう。


元就は、隆家たちの姿を見つける。

「隆家!」

「殿、申し訳ございません……」

「いや、お主らが無事に戻って来た、ここが重要じゃ」

元就は咎めることなく穏やかに言った。

「ありがたきお言葉、感謝いたします」


「山吹城はどうじゃった?」

「陥落もあり得るかと……。補給路を断っており、さらには商人にも城への商品輸送を禁じていましたから、恐らくは」

「ふむ……、これは時間の問題じゃろう」

元就も渋い顔をして言った。


だが、なかなか安心することはできなかった。

隆家が敗走した以上、恐らく尼子勢はこの銀山も狙って攻撃を仕掛けてくるかもしれないと元就は思っていた。


医者の家では、残っていた兵たち、悠月、松井が手伝いをしている。

「おーい、ケガした奴らいるか? ケガの手当てはこっちでやるぞ」

悠月が声をかける。

何人もの兵たちは悠月の声の方へと集まった。


「ヤバそうなケガをしてるやつから治療すっからな!」

悠月はそう言って、松井と重要度を分けていく。

そして、松井と医者を手伝っていた数人が手分けをして治療していく。


「悠月、家の中から晒を取ってきてくれないか? 少し足りなさそうだ」

「おう!」

悠月はそう言って、家の中に入って晒をもらってきた。

「ほら」

「ありがとう、助かるよ」


「悠月さん、こっちも頼めるかい?」

「お安い御用ですよ、もらってきます」

「ありがとう」

悠月はただひたすら手伝いに奔走する。


「悠月、悪いんだけどちょっとここ固定してて」

「ん、こんな感じで良いか?」

「うん」

松井は悠月が晒を抑えている間に包帯止めを使って固定する。

「これで経過を見よう」

「ありがとう」

「今は無理に動かさない事! それは守ってくださいね」

「はい!」

松井はそう言って次の兵の治療に当たる。

悠月はその様子を見て、傷薬をもらってくることにした。

「あれ? 悠月?」

「ああ、そろそろ薬が足りなくなりそうだったから」

「ありがとう、助かるよ」

松井は笑顔でお礼を言った。

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