第116話 凱旋と再会
七日間の神楽奉納を終えたのち、毛利軍は安芸へと凱旋する。
「殿、お帰りなさいませ」
留守居をしていた宍戸隆家が出迎える。
「うむ、留守居、大義であった。変わったことなどはなかったかの?」
「ええ、特には問題なく」
「ちちうえー、じじうえー」
隆元の元に、まだよちよち歩きの幼子が歩いてくる。
「
隆元は笑顔で幸鶴丸を抱っこする。
そう、彼は隆元の嫡男である。
元就もその様子を、目を細めて見守る。
「若様もこの通り、とても元気です」
隆家は笑って言う。
「それが一番じゃ」
だが、この時すでに元就は策をめぐらせていた。
すぐにでも出発しようか、少し間を開けるべきか、そこに少し悩んでいた。
というのも。
息子と孫の水入らずの時間を邪魔したくない親心からだった。
「防府の領土などはどうなさるおつもりですか?」
こそりと隆家が尋ねる。
「その件じゃが……」
隆元はその言葉にハッとする。
「さあ、幸鶴丸。父はまだじじ上とお話があるから、母上のところに行っておいで」
「やー!」
「わがまま言うでないぞ」
隆元は幸鶴丸をたしなめる。
「さあ、幸鶴丸。いらっしゃい。後で父上とたくさんおしゃべりなさい」
「やー!」
嫌がる幸鶴丸を尾崎局はあやしながら、先に奥へ下がる。
「父上、大内の領土の件でしたな?」
「そうじゃ。大内は義隆殿に陶殿の亡き今、もはや見る影もないほど力を喪っておる。放っておけば、尼子に九州の大友なども狙ってくるであろう」
「早急に攻め込むべき、というのが現状でございますな」
隆家の言葉に元就は頷く。
「私のことなど気になさらず。早急に出陣いたしましょう」
「では、準備を整え次第すぐに出陣いたそう。今回は元春には別の事を頼む故、隆元、隆景のみじゃ」
一方で山口では陶晴隆の戦死を受けて、大内軍は本拠地山口に大内義長と内藤隆世の兵3,000、そして山口までの防衛拠点として椙杜隆康の蓮華山城、杉宗珊・杉隆泰親子の鞍掛山城、江良賢宣・山崎興盛の須々万沼城、そして陶晴賢の居城で嫡男の陶長房が守る富田若山城、右田隆量の右田ヶ岳城などそれぞれの城に城兵が籠り、毛利軍を撃退する準備を整えていた。
また、石見三本松城の吉見正頼を警戒する野上房忠の軍勢が長門渡川城に配置されていた。
元就はその様子を偵察兵から聞き、策を練ることにした。
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